【幼馴染】、【友達】、【仲良し】
それは、近いようで距離のある言葉。
「…素直に謝られるとなんか変な感じ。」
「なんだよそれw」
ごめんな、蕾。
俺、蕾が俺と恋人だったことを忘れて、怖くなったんだ。
毎回のことなのに、もう何度目かもわからないのに。
でも、繰り返されているからこそ、恐怖がどんどん大きくなっていっているのがわかる。
どうしようもなく、怖かった。
だから、蕾から逃げた。
そのせいで2人に、1番は蕾に迷惑をかけちゃったな。
辛くて辛くて、蕾と恋人だった頃の記憶を消したいと思ってた。
でも、気づいたんだ。
俺が1番辛いことは何かって。
それは、蕾に忘れられること。
わがままだよな、
忘れたいのに忘れられたくない、なんて。
忘れられる蕾が羨ましいとさえ思ってたんだよ。
怒ってくれて構わない、嫌いになってくれて構わない。
けど、
俺の事は忘れないでほしい。
だらだらと心の中で募った言葉。
この言葉を言うことのできる日は来るのだろうか。
やっぱり来ないかな。
…もう、どっちだっていいか。
「ねぇ、蕾」
蕾は俺への恋心を忘れてしまっている。
けど、
また
《好き》って
《愛してる》って言ってもらいたいから。
蕾が記憶をなくしても、
俺は…
「好きです、付き合ってください」
何度だって君に告白する。
おわり
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!