第7話
7話
その時は、突然訪れた。
高校三年生の春。
俺は蕾に告白をした。
透と春の応援もあって、付き合うことになった俺たち。
だからと言って透と春と関係が薄くなるということもなく、本当に今まで通り楽しい生活を送っていた。
俺と蕾が付き合って3ヶ月後、事件は起きた。
俺が来週のデートはどこへ行こうかと聞いた。
「え?デート?急にどうしたの?」
最初、全くどういうことかわからなかったが、、
蕾は、俺と恋人として付き合った3ヶ月間の記憶がなくなっていた。
どうやら先天性のものらしい。
蕾は、自分が記憶がなくなっているということを知らない。
俺たちは恋人だったんだと、言えなかった。
ただ、怖かった。
これは、告白する時にも思ったことで、蕾は俺たち4人と今の関係でいることがとても幸せなようで、なんとなくこの関係が壊れることを恐れているように見えたから。
2人にはそれでいいのかと聞かれたけど、それでいいと言った。
「ねぇ、涼太。」
「んー?」
友達のままでいい。
そう、思っていたのに。
「私、涼太が好き。」
蕾の瞳に吸い込まれそうだった。
俺は、気がついたら口にしていた。
「俺も、蕾が好き。」
また、同じことを繰り返してしまった。
3ヶ月というタイムリミットの恐怖で押しつぶされそうな日が進み、とうとう明日で3ヶ月だという日。
「なあ、蕾。」
「なに?」
「…もし、明日。互いのこと忘れるとしたら、蕾ならどうする?」
「…なにそれw、不思議な質問だね。なんかあったの?」
俺はなにも答えなかった。
「それって、今何をするかってこと?」
「そう。」
すると、蕾は口を開く。
「何もしない。」
「え…」
「何もしないよ。だって、何かしたところで忘れちゃうんでしょ?」
少しだけ間を置いて、蕾は笑って言った。
「それに、忘れたとしても私はきっと、また涼太を好きになる。そんな気がするから。」
その言葉に、胸が締め付けられた。
その言葉は、どんな有名な科学者の言葉よりも俺の心に深く染み込んでいく。
「そっか。なら、よかった。」
それだけ言って、俺たちの会話は終わった。
次の日、蕾は3ヶ月間の記憶をなくしていた。