雨上がりの曇り空に1つの声が響く。
ここは小国ファリン。そして私は最高位の権力を持つ貴族の娘だ。お母様は一年前に死んだ。お父様は3ヶ月くらい前に家を出てから戻って来ない。だから、私は姉と暮らしている。使用人もいるが、15人くらいしかいない。
私は目の前にある共同墓地を見て呟いた。どこかの国と戦が始まってからファリンの人々は戦死や食料不足による飢死でどんどん減っていった。ここの共同墓地にはどんどん刻まれている死んだ人の名前が増えていく。
ファリンが敵国に占領されてしまったら、私達の家族は真っ先に殺されてしまうだろう。
そう考えると、涙が出てきた。
声が聞こえた。中性的な声。顔を上げると、知らない男の子が私の前に立っていた。
男の子は服装からして貴族のようだった。でも、この国の子ではないようだ。黒い髪に紫色の目。銀の髪に赤い目のこの国の住人とは全く違う。…そして、関係無いと思うが、とても可愛い…。
クロノが恐ろしいことを言った。人が死んで悲しくない?そんなことあり得ない。
ついカッとなって叫んでしまった。
震える声で私は尋ねた。クロノはそんな私を見て、悲しそうな顔した。
クロノは本当にわからないようだ。しかも、そう教えられてきたそう。可哀想なクロノ。人として当たり前の感情がわからないなんて…。ならば。
私は言った。クロノは驚いたような顔してから、言った。
クロノはとても嬉しそうだった。クロノにとって友達は初めてなのか。ならば、私が素敵な友達。いや、親友になってあげよう。この、可哀想な少年のために。なってみせるんだ。
空はお日様が顔を覗かせて、綺麗な虹がかかっていた。それはまるで、私達を祝福しているようだった…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!