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第1話

いち《シロ視点》
67
2019/11/23 09:13
シロ
シロ
また、人が死んだ…。
雨上がりの曇り空に1つの声が響く。
 ここは小国ファリン。そして私は最高位の権力を持つ貴族の娘だ。お母様は一年前に死んだ。お父様は3ヶ月くらい前に家を出てから戻って来ない。だから、私は姉と暮らしている。使用人もいるが、15人くらいしかいない。
シロ
シロ
戦をして何が楽しいのかしら…。
私は目の前にある共同墓地を見て呟いた。どこかの国と戦が始まってからファリンの人々は戦死や食料不足による飢死でどんどん減っていった。ここの共同墓地にはどんどん刻まれている死んだ人の名前が増えていく。
シロ
シロ
このままファリンは無くなってしまうの…?
ファリンが敵国に占領されてしまったら、私達の家族は真っ先に殺されてしまうだろう。
シロ
シロ
死にたく、ないよ…!
そう考えると、涙が出てきた。
クロノ
クロノ
どうして泣いているの?
声が聞こえた。中性的な声。顔を上げると、知らない男の子が私の前に立っていた。
シロ
シロ
ひゃっ?!あ、あなたは誰ですか?!
男の子は服装からして貴族のようだった。でも、この国の子ではないようだ。黒い髪に紫色の目。銀の髪に赤い目のこの国の住人とは全く違う。…そして、関係無いと思うが、とても可愛い…。
クロノ
クロノ
僕はクロノ。君の名前は?
シロ
シロ
わ、私はシロ・ナヴィアです…。
クロノ
クロノ
シロか!君にぴったりな名前だね!
シロ
シロ
ありがとうございます、あなたのお名前も素敵だと思います。
クロノ
クロノ
敬語じゃなくていいんだよ!話しづらいもの!ね?
シロ
シロ
えっ、えっと…うん。
クロノ
クロノ
でー。突然話は変わるけど、どうしてシロは泣いていたの?
シロ
シロ
そ、それは自分が死ぬのが怖いから。あと…戦のせいでたくさんの人が死んでいるから…。
クロノ
クロノ
それって悲しいの?
シロ
シロ
へっ?!
クロノが恐ろしいことを言った。人が死んで悲しくない?そんなことあり得ない。
シロ
シロ
自国の人々が死んでいくのよ?!悲しくないわけがないじゃない!!
ついカッとなって叫んでしまった。
クロノ
クロノ
その死んだ人達は自分達の国のために戦って死んだんだよね?なら、それは誇れることなんじゃないの?
シロ
シロ
本当に、わからないの…?
震える声で私は尋ねた。クロノはそんな私を見て、悲しそうな顔した。
クロノ
クロノ
ごめん。ごめんなさい。僕はずっと戦って死ぬことは誇れることって教えられてきた。僕には、わからない。それがわからないんだ…。
クロノは本当にわからないようだ。しかも、そう教えられてきたそう。可哀想なクロノ。人として当たり前の感情がわからないなんて…。ならば。
シロ
シロ
クロノ。私と友達になろう。私が、君に教えてあげる。人としての感情を。…ね?
私は言った。クロノは驚いたような顔してから、言った。
クロノ
クロノ
いい、よ。僕、友達って初めて。とても、嬉しい。嬉しい。…あれ?涙が出てきた。なんで、なんだろう…?
クロノはとても嬉しそうだった。クロノにとって友達は初めてなのか。ならば、私が素敵な友達。いや、親友になってあげよう。この、可哀想な少年のために。なってみせるんだ。
シロ
シロ
フフッ。これで私達は友達ね。これからよろしくね。クロノ。素敵な友達になれるように頑張る。
クロノ
クロノ
こちらこそよろしくね。シロ。僕も君の素敵な友達になれるといいな。
空はお日様が顔を覗かせて、綺麗な虹がかかっていた。それはまるで、私達を祝福しているようだった…。

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