あれから、クロと私とお姉様はすっかり仲良くなった。お姉様は忙しいはずなのに、クロが来たときはいつも使用人に頼んでこうやってお菓子をくれる。毎日がとても楽しかった。…だが、ある日。
家に突然やって来た兵士が恐ろしいことを言った。
それだけ言って兵士は帰っていった。
お姉様は涙を流して私に謝った。「お姉様は悪くない。だから、謝らなくていいんだよ…!」と、言いたいのに言葉が出てこない。神様…神様はなんてひどいことをするのですか…?クロは何も言わずにただ、私達をじっと見ていた。
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お姉様が出発する日になった。今、私達はムーンヒルにいる。
涙が止まらない。お姉様も涙を流している。そりゃあそうだ。たった1人の家族だ。いなくなるなんて、悲しいわけがない。
クロが珍しく真面目な顔で言った。まぁ、さすがにここでふざけることはできないか。こうして見ると、クロは命の重さが本当にわかるようになったな。初めて会ったときなんかは死んでも悲しくないとか言ってたもの。こんな短期間でも成長したんだなぁ。私がそんなことを考えている間にも話は進んでいく。
そう言ってお姉様は去っていく。そのお姉様に向かって私は言う。
叫ぶ。遠ざかっていくお姉様の背に向かって。お姉様は驚いたような顔して振り向いた。そして言う。
お姉様の姿は、たくさんの兵士達の中に消えていった。お姉様の姿が見えなくなったとたん、私は小さな子供ように泣き叫んだ。
お姉様。絶対に帰ってきてくださいね。約束、ですよ…。そして神様、お姉様を守ってください…。空は黒い雲で覆われて、今にも雨が降りそうだった…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。