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第9話

夏休み リョウver
30
2018/07/18 13:28
あぁ、だりぃ。夏休みに塾かよ。
よっ、サヤカ!
サヤカは、中学校の同級生だ。
比較的大人しいヤツだが、話し出すと案外話すし、結構面白い。周りの女子らより随分マシだと思う。
サヤカ
っあ、リョウ君!
驚いたようにサヤカが言った。
大きめの瞳が見開かれる。
そして、どこかホッとしたように
サヤカ
あぁ、おはよう
と言った。
俺は宿題を教えてくれと頼んだ。
彼女は他の人の方が分かりやすいのに、と
ボヤきながらも教えてくれた。
中学1・2年の時まで塾に行っていなかった
らしい。それでもうこの問題を理解出来るのはすごいと思う。サヤカ、お前は努力家だ。
サヤカ
ここはこうでね・・・
せっかく教えてもらっているのに、俺はほとんど聞いていなかった。細いフレームのメガネの奥の、綺麗な瞳ばかり見ていた。
サヤカ
・・・、で、こうなって終わり
ハッとして問題集に目を戻した。
速くてついていけねぇ
聞いていなかったなんて言ったら、どんな顔をするんだろう。
サヤカ
よし、先生んとこ行こう
もっかい教えろよと抵抗しながら、フッと気が付いた。サヤカの目は、俺を見てはいなかった。周りをそっと見渡している。
あぁ、と俺は思った。女子達だ。
アイツらにとって、俺は「リョウ君」でしかない。カッコよくて面白くて賢くて運動神経バツグンで・・・と、少女漫画のヒーローか俺は?と頭が痛くなる。
サヤカ、アイツらの視線を気にしてんの?
サヤカは肩を竦めて笑った。
確かに女子はこえーよなぁ。
俺はこっそり同意した。
んじゃ、俺戻るわー
帰り、宿題教えろよ?と念を押して、
俺は席に戻った。
何故か帰りが少し楽しみに思えた。

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