第58話
好きになってごめんなさい、
*あなたside*
重い足取りで通学路を歩く。
最近、体の調子が良くない。
どこかだるくてしんどい。
そんでもって、痛い。
肌がどんどん侵食されていっているのが分かる。
そろそろ、決断しなきゃ……だよなあ。
このままころんに言わずに去るかどうか。
……それはそれで可哀想だよね。
私が好きな人にそんな事されたら病む自信ある。
どうしようか。
なんて言うべき?
うーーーん……
頭を悩ませながらトボトボと歩く。
そしてふと顔を上げると、曲がり角で立ち尽くしているるぅとくんが、いた。
『あれ、るぅとくん……?』
私の声に驚いたのか、ビクッと肩を震わせる。
………なんで、悲しそうな顔、してるんだろう。
『……あなたちゃん。』
『どうしたの?そんな所でうつむいてて……。何かあった?』
『あったっちゃあったね………』
あははなんて自嘲気味に笑うるぅとくん。
どうしてそんな作り笑い………。
『無理して笑わなくてもいいって言ったのはるぅとくんだよ。ね?何があったの。』
『……………っ』
私から目を逸らして再び俯く。
こんなるぅとくんは初めてだ。
いつも爽やかな笑顔で誰でも受け入れてくれるるぅとくん。
私の悩みだって全て聞いてくれた。
今度は私があのるぅとくんの話を聞いてあげる番なんだ、なんてちょっとだけ嬉しい気持ちがあったりなかったり。
でも、るぅとくんをここまでにする原因ってなんなんだろう……。
検討もつかない。
しばらく考え込んでいたるぅとくんは、ゆっくりと私の方へ視線を向ける。
瞳の奥に灯る何かは、私には分からない。
『………あなたちゃんを傷つけるかもね』
『え?』
『あー、これは怒られるなあ……』
さっきからるぅとくんが言っている言葉の意味が分からない
なんの話なんだろう。
私を傷付ける?怒られる??
『どういうこと?』
『………こういうこと』
それだけ言うとほんの少し控えめに私の体を包み込んだ。
……………包み込んだ!?!?!?!?
『えっ、あ、るぅとくんなにs『ちょっと黙って』』
待って。
超待って。
え????
るぅとくんが悩んでた▷その原因を聞く▷るぅとくん考え込む▷るぅとくんに抱きしめられる←イマココ
な、なんで私、抱きしめられてるの………
さっきまでお悩み相談をしていたはずなのに、急展開すぎて意味が分からない。
……急展開すぎるから、心臓の鼓動が速くなる。
『…………る、るぅとくん…………』
かすれた声でそう呼ぶと、そっと体を離される。
手は、私の肩を掴んだまま。
真剣な眼差しが私を捉える。
るぅとくんの髪は夕焼けの空と同じ色。
茶色、でも黄色い。
綺麗、だ。
…………るぅとくん、あなたは今、何を考えているの………?
『………ごめんね、好きだよ』
『…………え』
るぅとくんの手が私の頬に添えられる。
風で髪がなびく。
大きく目を見張らせる。
優しく微笑みながら言われたその言葉。
硬直していると、気づけばドアップでるぅとくんの顔がうつっていた。
蓋をされていた唇は周りの空気に触れ、とても冷たく感じる。
…………私、今、るぅとくんに………………
何か喋ろうとすると人差し指で唇を抑えられる。
『それ以上は何も喋らないで。………………じゃあ、また明日ね。』
一人ぼっちになったその場で膝を抱え込む。
真っ赤になった顔を見られないように手で必死に隠しながら。
私今、るぅとくんに告白されて、それで……………
るぅとくんのその時の表情が頭から離れられない。
優しく、でもどこか真剣な表情。
思い浮かぶたびに顔が赤く、心臓の鼓動が速くなる。
『…………意識、した……?………』