--------------------水葉side-------------------
私は一瞬何が起こったのか理解できなかった。
見えているのは、体を真っ赤に腫れさせて、苦しそうな顔で倒れている紅葉さんと、必死に紅葉さんに呼びかけている如月さん。
クラス全員が顔を真っ青にさせている。
……私も含めて。
紅葉さんも私と一緒の水アレルギー。
なのに水をもろに被ってしまった。
そんなことをすればどうなるのかなんて、私が一番理解している
じゃあ、こんな状況になったのは
『私のせい……………………』
心の中で呟いたつもりが、口から漏れてしまった。
聞こえたのか如月さんはパッとこっちを見てこう放つ
ゆ「自分を責めてる暇あるなら、早く先生を呼んで……それが今、あなたにできるあなたへの償い、でしょっ!?!?」
怒ってるんだな。そう、彼女の言葉と姿から汲み取れた。
償い…………………
そんなことをしても許されないことは分かっている。でも今私が紅葉さんの為に出来る事はこれしかない。
気付けば私はクラスの人達を押し退けて、教室の外へと走った。
それから紅葉さんは救急車で病院へと運ばれた。
私も救急車に乗って一緒に病院に行きたかったが、先生に事情を話さないといけなくなったため、救急車に乗り込む如月さんと青柳さん、木曾さんの姿を見ながら教室へと戻った。
私はその時起こった出来事を全て話した。
まあ、私に一切非は無かった為案外すんなりと解放された。
………良かった………これでやっと病院へ行ける…………
ちゃんと紅葉さんと話さないと……………………
そう思いながら向かった病院。
紅葉さんの病室の前まで行き、扉に手をかけたところで止まった。
_____________________面会謝絶__________________
冷たくて暗い海の中に突き落とされたような感覚が私を襲う。
面会謝絶って事は、それだけ状況が……………………!?
どうしよう
足に力が入らなくて、その場に座り込む
私があの時はっきりと言えていれば……やめてと言えれば…………
いや、そんなことをしても変わらなかっただろうな……
ちゃんと、水アレルギーだと、言えていれば…………
今まで怖くて、恥ずかしくて誰にも言えなかった。
一人だと思いこんで、勝手に自衛して
私のこの弱さを恨んだ
自分を簡単に死に追い込める水。
それなのにあの時紅葉さんは怯むこともなく…………………
不意に、目から涙があふれる。
私は肌に触れないよう慌てて拭った。
る「…………………白城、さん……?」
こ「こんな所で何して………」
ゆ「………………………………」
声と、気配と、足音であの三人がいるのが分かる
話しかけられたのにも関わらず、怖くて振り向けなかった
顔向けが、出来ない…………
『ごめん……………私のせいで……………』
やっとの事で絞り出たこの言葉。
とても小さくて震えてしまった。
ゆ「……………それ、私達に言ってどうすんの」
こ「ちょっ如月………」
『ううん、いいよ青柳くん…私が悪いんだもん……。私が弱かったばっかりに………』
る「白城さん…………」
『紅葉さんは、すごいよね……………。何も怯えずに立ち向かってくれて…………。なんであんなに強いんだろう………。私なんかとは比べ物にならないくらい……………………………………。羨まs………』
ゆ「うるさい……………」
突如言葉を遮る如月さん。
え………………………?
私、なにか悪いこと言った……?
ゆ「白城さんに、あなたの何がわかるの………。あなたは強くも無いし怯えてる物がないわけじゃない。あの子は………あの子は!!!白城さんよりも………もちろん私達何かよりも、ずっとずっと辛い思いをしてきたの!!!苦しい思いをしてきたの!!!…………そんな簡単にあなたを語らないで………知ったふうに話さないでよ……!!」
分からない
知らない
私よりも辛いって、何……………?
ねえ、紅葉さん
あなたは一体なんなの…………………?
ゆ「分かったなら、もう来なくていい…………。帰って……………………。」
病院を出たときの空は黒い雲でおおわれていた。
もう少しで、雨が振りそうな、そんな空。
今にでも溢れてきそうな涙。
その感情と空の色が重なる。
視界がぼやけそうになるのを抑えながら、私は走って家を目指した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。