相変わらず爽やかな表情で車を走らせるボノナ
こんな彼氏がいるなんて、
と誇らしく思っていたのもつかの間
いつもは真っ直ぐ宿舎に向かうはずの車が
何故かいつもと違う道に入っていったことに気づいた
今までも2人でドライブして
急にどこかに行くことはあったけど
場所まで秘密にされはことは無かった
そう言って口元に人差し指を近づけて
同時にさりげなくウインクをするボノナ
…ほんとにやめて欲しい。
片手でハンドルを握りながら少し目線をこちらに移す所も
前からの夕日に照らされてる所も。
全てが輝いていて見惚れてしまうほどに、彼は綺麗だった
いつも余裕なボノナに対して
笑ったり怒ったり拗ねたり照れたり感情が忙しい僕
なんだか彼に振り回されてるようで気に食わないな…
たまには僕もボノナを照れさせてやろうっ!
なんて突拍子もなく軽く考え、
優しく揺れる車の中で僕はあれやこれやと作戦を練り始めた
急に手を握ってみる?
でもさっきボノナからしてくれたからな…
じゃあバックハグとか!?
…それは僕の方が先に照れちゃいそうだし、、
とにかく悶々と考えていた僕は時間なんて忘れていた
そう言ってボノナが僕を連れてきたのは
少し大きなショッピングモールだった
…2人で来たのはいつぶりだろうか
こっち、こっち、と言わんばかりに
ボノナは足取り軽く僕の1歩前を進んでいく
いてもたってもいられなくなった僕は堪らず声をかけた
それにしてもなんでこんなに嬉しそうなんだ…?
何故か少し自慢げなボノナを不思議に思いながら
彼の言うとおり、後を着いて行く
そう言われたのはショッピングモールの一角にある
お花屋さんの前
訳が分からない僕はとにかく返事をすることしか出来なくて
曖昧に返事を返した
そんな僕を見て安心したのか
1度ニコっと微笑んでから
ボノナは店の奥の方に入っていった
…しばらくすると
何やら店員さんと嬉しそうに話しながら出てきて
こっちこっちと言わんばかりに手招きする
そう言って少し照れながらも
最後には真っ直ぐ僕の目の見て1輪の花を差し出したボノナ
それはまるで燃えているような炎を連想させる、
鮮やかな赤とオレンジの花だった
透明のフィルムに包まれて、
同じくオレンジ色のリボンで結ばれている
言葉にならない程美しいその花は
さっきボノナと一緒にみた夕日を閉じ込めているみたいで
2人の思い出の象徴だと思ったらすごく嬉しくなった
いきなりのサプライズに驚いたのと、あまりの嬉しさに
僕は上手く言葉を紡げなくて
思いついた感謝の言葉をひたすら並べた
僕の言葉を聞いて満足そうに微笑んだボノナは
今度は店員さんに向き直ってぺこっと頭を下げた
僕も彼にならって慌ててぺこっと頭を下げる
2人でくるりと振り返って店を後にしようとした時、
とんとん、と優しく肩を叩かれて僕は後ろを振り返った
店員さん「…コソッ このお花、カンナって言うんです。花言葉は『永遠』 これからも2人で幸せな日々をお過ごしくださいね!」
振り返った僕にそっとそう伝えてくれた店員さん
永遠、か…
ほんとにさ、ボノナやってくれるじゃん?ㅎ
今度は曖昧なんかじゃなくて
ちゃんと僕の言葉でしっかりと彼の目を見て伝えたんだ
まさか店員さんにバラされるとは思ってなかったのだろうか
もうタコのように真っ赤になったボノナは
斜め下を見るばかりで全然目を合わせてくれなかった
…そんな所も可愛いけどね?ㅎ
今がチャンスだと思った僕は……
勢いよくボノナの手を掴んで必殺!渾身の笑顔!
僕の渾身の攻撃を受けたボノナはやっぱり真っ赤
そんな中でも僕の手はギュッと握ったままで。
作戦大成功〜!!やったねっ〜!
なんて調子に乗った僕は
もう一度店員さんに頭を下げて、幸せを噛み締めながら車の方に向かって歩いていった
最初はお互いなんだか恥ずかしかったけど、
車に着く頃には緊張が解けて話に花が咲きはじめる
久しぶりになんの心配もなく話せた時間で
あまりに充実した一時だった
宿舎に着いた僕達は2人で手を繋いだまま中に入っていく
ドアを開けた所にはハニヒョンとシュアヒョンがいて
おかえり、と出迎えてくれた
先にお風呂に入ることにした僕がその場を離れようとした時、コソッとハニヒョンが言ってくれたんだ
僕は答える代わりにとびきりの笑顔で大きく頷いた
vernon side
スングァナがお風呂場に向かっていったのを確認した俺は
真っ直ぐに自分の部屋…
ではなくディエイトヒョンの部屋に向かった
コン コン コン
…実は聞いちゃったんだ
スングァナが
ジョンハニヒョンとシュアヒョンに相談してるとこ
…確かに認めざるを得なかった
いつもデートに誘ってくれるのはスングァナだし
無口な俺はスングァナを楽しませてあげれていなかった
だから、
その話を聞いて俺はすぐにどうすればいいか考えたんだ
そこで思いついたのが海でのデート
…我ながらいいアイデアでしょ?
今は9月の終わり
海にはそんなにたくさんの人が来ているわけではないだろう
せめて今日だけは2人でゆっくり過ごしたい
…それでも何かが足りない気がした
何かサプライズのようなことを出来ないだろうか
でも、あいにく俺はそういうのを考えるのは不得意だ
どうしたことかと悩んだ末、俺が思いついたのは
ディエイトヒョンに相談することだった
彼なら何かロマンティックなアイデアをくれるに違いない
ヒョンのおかげで成功したサプライズ
これからもスングァナを大切にしよう
そう改めて誓った日になった
end.
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!