色々な事情があり、今、私は、てつやさんのレコーディングに付き合っている。
スタジオにいる人は優しいから加工でどうにかすると言い音痴な面に関しては何も触れてくれないらしく、そこで私が何故だか呼ばれた。
ラストスパートのあたりで、てつやさんはこちらを向きながら歌い始めた。
つい、私もー!的なコールを入れたくなった。
サンキューと言った後に、こちらに向かって歩いてきた。
てつやさんが、気さくに接してくれているせいか私も淡々と話をすることができる。
お店へ行くと、そこは馴染みやすそうな賑やかなお店だった。
黙々と頬張るてつやさんは可愛かった。
視線に気づいたのか少し頬を赤らめながら私の方をチラリと見て言った。
にこりと少し微笑みながら言うと、何かに感づいたかのように言ってきた。
互いに笑い合った。
そして、そのまま大したことのない話だが、続きいつの間にか閉店の時間が近づいていた。
なんだか、息が合うようになり、今朝より何もかもが楽しく思えてきていた。
車内では、ずっと気になっていた事を聞いてみた。
少し、凹んで大人しくなった私の頭の上にそっと手を置き、てつやさんは笑いながら呟いた。
トクッと胸が高鳴ったのを感じた。
さっきまでは、ちっともなかった感情が少し沸き上がってきた。
だって、今日はたまたま付き添いでレコーディング行ったわけで、もう、今日のようにプライベートのような場所や時間に会うことは……だから。
パッと明るくなった空気と共に私とてつやさんの顔も笑顔に変わった。
私なんかがてつやさんの「友達」でいいのか不安が募ったが、あの日から1度も話さない日はなかった。それが本当に嬉しくてたまらなかった。この先が楽しみになりそう。
そして、後になって気づいたが、タメ口になった瞬間、違和感を感じさせないてつやさんは凄いと思った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。