ゆっくりと、瞼を開く。
…見覚えのない部屋。
そして何故か、縄で縛られている。
辺りを見回す。
そこで、自分の着ている浴衣が目に入った。
ヒュゥーー…ドォォンッ!!!
…待って、もしかして…今の花火が上がる音?
…早く戻らなきゃ。先生、きっと心配してる。
…あの人は、そういう人だから。
突然話しかけられ、驚いて声のした方を振り向く。
童磨と名乗るその男を睨みつけ、問い掛ける。
そう言って、ジリジリと此方に近付いてくる童磨。
次から次へと。何なんだ。
今度は、身体中に青い線が入った、ピンク髪の変な男が出て来た。
……あの方? 脅す? 何を言ってんだ、コイツら。
というか、早く帰してくれないかな。
…まぁ無理だよな、明らかにやべぇ奴らだもんな。
童磨とかいう男に抱えられる。
嫌だ。触るな。気持ちが悪い。気分も悪い。
ジタバタと暴れ、童磨に蹴りを入れる。
鋭い扇のようなものが、首に刺さった。
……痛い…。
初めてだ。こんなに痛い思いしたの。
…並のヤンキーなら、自分で追っ払ってたから。
…あぁ。そろそろ、花火終わっちゃうなぁ。
先生と、花火見たかったなぁ。
…いくら呼んでも。
漫画やアニメみたいに、先生が駆け付けてきてくれる訳ではなくて。
…あぁ、私どうなるんだろ。
人身売買とか? やだなぁ、死にたくないなぁ。
…そこで私は、意識を失った。
先生が、助けに来てくれていたことも知らずに。
︎︎
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。