前の話
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「陽菜」
『ん?どしたの弘樹』
私は、蒼井 陽菜。
「部活いっしょにいかん?」
『いよ〜、おいてかれちゃったしw』
この人は佐久間 弘樹
幼なじみだ。
十年間一緒。
中学生になってからは、そっけない態度だったんだけど、久しぶりに誘ってくれた。
「行くか」
『うん!』
いつもどおり、数少ない会話と外からの蝉の声がきこえる。
夏。部活は残りたい人は冬までやれるというシステムのこの学校は、ほとんどの同級生が部活に残り、最後の思い出をつくっている。
「『お願いしまーっす』」
残れるといっても、1、2年生とは別で練習するわけで、私達は反対側のコートに足を運んだ。
「あ、陽菜!ごめん、おいてっちゃって」
『大丈夫!教えるの頼まれてたんでしょ?w』
「そうそうw陽菜指名もあるから、明日は陽菜ねw」
『おけおけw』
この子は叶
元部長だ。
そして、たった一人の同級生の女子バスケ部員。
同い年が私と叶だけだったのもあって、とても仲がいい。
私二人は、男子に混ざってやっている。
男子バスケ部は、8人いるため、私達が入ると人数的にもちょうどよいのだ。
そして今日も、私達はバスケを始めるのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。