とはいえ、決心していなかった言葉を述べるのは簡単なことではない。
モゴモゴと口ごもり、ハッキリした気持ちを伝えられぬ間に、高木くんが先制パンチを決めてくる。
ニコニコと屈託のない笑みを浮かべて返してくる高木くんを目の当たりにして、伝えたい気持ちも一気に萎んでくる。まるで恋心が邪な感情のように思えるくらい、純粋な気遣いを示す高木くんに言葉が続かない。何とも居た堪れない気持ちでいっぱいになっていた私に向けて、高木くんはイタズラな笑みを浮かべて耳元で囁く。
いきなり腹黒よろしくダークなオーラ全開で語る高木くんに思わず素っ頓狂な声が飛びてしまう。そんな私の様子を見て、高木くんはいつもの調子で優しく思い出を語り始める。
普段と変わらぬ穏やかな口調だからこそ、油断した。
いつも通りの優しい気配り上手の高木くんだと思って、気を緩めてしまった。まさか、そこから一気に畳み掛けるとは思いもせずに……。
クスクスと笑みをこぼす高木くんの声は、いつもと打って変わって嫌味な響きをしていて、思わず尋ね返す言葉が震えてしまう。
動揺している私の声を聞いた後、高木くんは実にうれしそうに述べてた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。