第3話

3話
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2022/10/20 11:00
3日後の火曜日。
午後1時30分。
僕は内海勝也と立川の公園にある、バスケットコートに来ていた。
端谷翔人
端谷翔人
はぁはぁ……休みの日にまでバスケかよ。
夏休みということもあり、公園にはたくさんの人がいる。
内海勝也
内海勝也
まぁ、普通にバスケしたいってのもあるけど、俺は翔人と・・・バスケしたかったんだよね。
2人で1on1を始めてからまだ30分も経っていないのに、僕はヘトヘトだった。
端谷翔人
端谷翔人
もう2年もブランクあるやつ捕まえて何言ってんだよ。全国クラスのお前についていけるわけないだろ。
勝也はボールをつきながら笑う。
内海勝也
内海勝也
おいおい。じゃあなんで今、16対16で同点なんだよ。
そう言った勝也は1歩下がり、見惚れてしまうほど綺麗なフォームでシュートを放つ。
ボールは綺麗な弧を描いてリングの真ん中に吸い込まれた。
内海勝也
内海勝也
まぁ、これで18対16。マッチポイントだな。
僕は水を飲みながら提案する。
端谷翔人
端谷翔人
もう休憩しよう。勝也の勝ちだわ。動けない。
内海勝也
内海勝也
ええ!なんだよそれ!ちょっと体力落ちすぎだぞ!シンプルに走ったりしたほうがいいな。
そう言いながらも、勝也はずっとシュートを打っている。
全部綺麗なフォームで、全部入る。
勝也が数えきれないくらいの時間を練習に当てていることが、それだけで伝わってくる。
端谷翔人
端谷翔人
……勝也は、僕にまたバスケしろとは言わないんだな。
勝也がチラッとこちらを見る。
内海勝也
内海勝也
俺が言ってもしょうがないし。第一に、無理にやれなんて言えないよ。
太陽の光が、ジリジリと肌を焦がすのが伝わる。
内海勝也
内海勝也
まぁ、日本一のポイントガードと全国行きたいってのはちょっとあるけど。
端谷翔人
端谷翔人
僕はそんなにうまくないよ。
ポイントガードというのはバスケをやっていた時の僕のポジションで、
チームの司令塔的立ち位置。
友達が勝也と茅華しかいなくて、人とコミュニケーションが取れない僕には一番向かないポジションだ。
事実、
それが原因で僕はバスケをやめた。
内海勝也
内海勝也
バスケ、もう嫌いなの?
端谷翔人
端谷翔人
だったらお前とここ来ねーだろ。
へへへへと2人で笑った後、もう一口水を飲んだ。
少し休憩した後、もう一試合して、
それからスポーツ用品店に勝也が部活で使うテーピングを買いに行った。
端谷翔人
端谷翔人
すごい量買うんだな。
まぁな、という勝也の腕をよく見ると、何個か青あざがあった。
試合で負ったのか、はたまた練習で負ったのかはわからないが、どちらにしろそれだけバスケに打ち込んでるということだろう。

やっぱり勝也はすごいやつだと心から思った。
明るくて、みんなをまとめる統率力もあって。
だから友達はたくさんいるはずなのに、1人でいる僕を気遣っていつも一緒にいてくれる。
本当に、根っからの主人公みたいなやつだ。

店を出ると、もう夕方になっていた。
勝也の家は立川にあるので、ここで別れることになる。
じゃあ、と僕が言おうとすると、それを遮って勝也は
内海勝也
内海勝也
今日お前ん家行ってもいい?
と言い出した。
端谷翔人
端谷翔人
え。いいけど。
そのまま電車に乗って20分。
僕の家の最寄り駅まで来た。
小学校の頃から大会だったりスポーツクラブだったりで顔は合わせていたけど、勝也がウチにくるのは初めてだ。
僕はなんだか緊張して、移動中あまりうまく話せなかった。
端谷翔人
端谷翔人
着いたよ。
家の前に到着したその瞬間。
後ろから、悲鳴のような声が聞こえてくる。
佐藤茅華
佐藤茅華
ヒャエッッ!!う、内海くん?
買い物にでも行こうとしていたのか、茅華がエコバックを持って家から出てきた。
端谷翔人
端谷翔人
今ヒャエッッって言ったな。
内海勝也
内海勝也
あ、えっと。。佐藤茅華さんだ、よね?
茅華はうつむきがちに前髪を触りながら、はい、と答える。
端谷翔人
端谷翔人
なぁヒャエッッって何?
内海勝也
内海勝也
佐藤さん、そこに住んでたんだ。
佐藤茅華
佐藤茅華
ち、茅華で大丈夫です!
内海勝也
内海勝也
あ、ち、茅華ね。うん。わ、わかった。
妙にムズムズする時間が流れた。
端谷翔人
端谷翔人
なぁ茅華。ヒャエッッって……。
佐藤茅華
佐藤茅華
あの!お気になさらず!2人で楽しんでください!私、スーパーに行くんで!
そう言って茅華は走り去っていった。
良かった。
茅華が現れたおかげで、僕の緊張も少しほぐれた。
端谷翔人
端谷翔人
あいつ、無視しやがって。どう思うよ。
僕の言葉が聞こえていないのか、勝也はまだ茅華の背中を見ている。
端谷翔人
端谷翔人
はぁ。2人して無視かよ。ほら、行くぞー。
家に入り、母さんに軽く紹介してから、2階の部屋に案内する。
勝也はなんだか落ち着きなくそわそわしていた。
付き合いが長いとはいえ、初めて訪れる友人の家だから、そわそわもするだろう。
しばらくマンガを読んだり、たあいもない話をして時間を過ごす。
端谷翔人
端谷翔人
あ、そーいえば、LIMEのグループ招待していい?
ふと思い出してそう言うと、勝也は顔を上げてこちらを見た。
内海勝也
内海勝也
え、なんの?
端谷翔人
端谷翔人
茅華と勝也と俺のグループなんだけど、なんかプレンド?ってやつを茅華がやりたいらしくて。
そう聞いた途端、勝也のテンションが上がった。
内海勝也
内海勝也
まじか!あの流行ってるやつだろ!?うわぁ!しかも佐藤さんとのグループ!?ほんと、お前はいいやつだなぁ!
端谷翔人
端谷翔人
あぁ、おう。
なんだか急にご機嫌になった。
今日の彼の情緒は安定しないらしい。
内海勝也
内海勝也
茅華さんとは体育委員で一緒でさ。ちょくちょく話してはいるんだけど。
さっきからこいつの茅華に対する呼称が定まっていない。
グループに勝也が参加した通知がくる。
参加人数は4人。
『よろしくお願いします!』
と勝也がメッセージを送り、すぐに茅華と勝也の2人の会話が始まった。
窓の外を見れば、いつ帰ってきたのか、向かいの部屋の電気が点いている。

2人がやりとりするLIMEの通知音が、ここから茅華の部屋までのいつもの距離をなぜか遠く感じさせた。

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