第8話

8話
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2022/11/24 11:00
現在の時刻は16時30分。
18時から、近くの河原で花火大会がある。
花火自体は神社からでも十分見ることができるが、もっと近くで見たいと茅華が言うので、あと1時間くらいしたら神社を出ることになった。
佐藤茅華
佐藤茅華
ねぇ!あれ!やろうよ!
ベビーカステラを頬張りながら茅華が言う。
完全にこの3人のイニシアチブを握っている茅華が指差した方には、小さなバスケットゴールが2つ横並びであった。
どうやらゲームセンターでよく見るようなシュートゲームで、30秒以内にゴールにボールを入れた数で、貰える景品が変わるらしい。
端谷翔人
端谷翔人
僕はいいや。
そんな僕を見て、勝也は茅華に向き合う。
内海勝也
内海勝也
片方のゴールはちびっ子が使ってるし、とりあえず茅華がやってみなよ。
佐藤茅華
佐藤茅華
そうだね!やってみる!
端谷翔人
端谷翔人
何狙うんだよ。
ゴールの奥には景品がずらっと並んでいる。
佐藤茅華
佐藤茅華
そりゃあ、A賞でしょ!あのたこ焼き機、欲しい!
端谷翔人
端谷翔人
30秒で55本以上ゴールか。無理だろ。お前、水泳以外はからっきしじゃん。
佐藤茅華
佐藤茅華
うるさい!見てなさいよ!絶対とってやるんだから!
意気込む茅華を見て、店主が言う。
店主
お嬢ちゃん、ちなみに言っとくけど、ここら辺の高校でバスケやってる高校生のお兄ちゃんたちも取れてないからね!バスケ部のスタメンだったらしいけど!
まぁ頑張れよと付け加えて、店主はお金を受け取った。

結果は散々で、たったの2本しかシュートは入らなかった。
佐藤茅華
佐藤茅華
ねぇ!難しい!
茅華は残念賞の飴を舐めながらボヤいている。
少年
あのエアガン欲しかったな!
隣の少年もダメだったらしく、同じように飴を舐めている。
端谷翔人
端谷翔人
だから言ったろ。
佐藤茅華
佐藤茅華
はぁ、欲しかったなぁ。みんなでしたかったなぁ、タコパ。
そう言って茅華が店を後にしようとした時、
内海勝也
内海勝也
おじさん、俺もやっていい?
勝也が身を乗り出して言った。
佐藤茅華
佐藤茅華
え!勝也やるの?
内海勝也
内海勝也
うん。多分、取れるよ。たこ焼き機。
佐藤茅華
佐藤茅華
えー!本当!?
茅華は目を輝かせている。
端谷翔人
端谷翔人
あの、おじさん。僕もいいかな。
佐藤茅華
佐藤茅華
え、翔人も!?
端谷翔人
端谷翔人
あ、まぁ。楽しそうだし。
隣には勝也、後ろには茅華、前には、ゴール。
スタートの合図とともに、6つのボールが台の奥からこちら側へと流れ込んでくる。
僕は無心でシュートを打った。
ボールはゴールに次々と吸い込まれていく。
周囲の音は何も聞こえないし、ゴールしか目に入らない。
これまで勝也とバスケで勝負することはあっても、いつも僕が途中でやめて、うやむやにしていた勝敗。
ちゃんとしたゴールでもボールでもないが、目に見える形で勝敗が決まってしまう。

今日だけは、負けたくなかった。

残り3秒、2、1……
佐藤茅華
佐藤茅華
2人ともすごい!!
茅華の声だ。
そう思って放った最後の1球はリングの縁を1周して、そのまま中には入らず零れ落ちた。
ホイッスルの音が僕らにゲームの終了を告げた。
僕のスコアは、59。
勝也のスコアは、60。
1本の差で、僕は負けた。

振り返るといつの間にか人だかりができていて、
さっきの少年が拍手をしたのをきっかけに、見ていたほとんどの人が僕らに拍手をくれた。

勝也は、
内海勝也
内海勝也
おー!2人ともA賞余裕だな!やっぱり、翔人はすごいよ!
と、嬉しそうにしている。
なぜか、たこ焼き機は勝也でも僕でもなく、茅華がすでに受け取っていた。
おじさんにもう1つの景品は何が欲しいと聞かれたが、特に欲しいものもなかったので、
さっきの少年にそのエアガンをあげてほしい、とだけ伝えて店を後にした。
と、同時にポツポツと雨が降ってきた。
佐藤茅華
佐藤茅華
えー!雨じゃん!傘持ってないよ!っていうか、これ、花火中止じゃないの!?最悪!
茅華と勝也が横並びで騒いでいる。
1本差。
言い表せないほど、悔しかった。

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