第2話

2話
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2022/10/14 07:05
高校の最寄り駅から電車に揺られて20分。
駅を出て、徒歩5分、
真っ直ぐ住宅街を進めば我が家が見える。
母さん
いらっしゃ~い!
母さんが笑顔で出迎えてくれる。
茅華がいる間は、いつも機嫌が良い。
だから僕は、昨日出し忘れていた弁当箱をそっと台所に置いておく。
火にかかった鍋からスパイスの香りがする。
今日はカレーのようだ。
佐藤茅華
佐藤茅華
ねぇー!翔人!部屋汚い!!
ギョッとして、2階に駆け上がる。
僕の部屋の扉は開け放たれ、中には案の定、茅華がいた。
端谷翔人
端谷翔人
勝手に部屋に入るなよ!
佐藤茅華
佐藤茅華
ほら!チャッチャと片付けなさい!
腰に手を当て仁王立ち。
あんたは母さんか。
端谷翔人
端谷翔人
うるさい。お前は下に行ってろ。
佐藤茅華
佐藤茅華
私も一緒に片付けてあげようか!
端谷翔人
端谷翔人
まじでやめろ。
佐藤茅華
佐藤茅華
さぁさ!ベッドの下には何があるかな~
何故そんなに楽しそうなんだ、こいつは。
ベッドの下を覗き、手を入れて何かを探っている。
一通り探索し終えると、2回くしゃみをして、すごい勢いでこっちを向く。
佐藤茅華
佐藤茅華
ホコリしかないじゃん!!
端谷翔人
端谷翔人
逆に何があると思ったんだよ。
佐藤茅華
佐藤茅華
べっつに~。
茅華はしつこく部屋の中を物色している。
端谷翔人
端谷翔人
いくら探しても何も出てこねーから。ほら、下で飯食べるぞ。
そう促しても、腕組みをして何かを考えている。
端谷翔人
端谷翔人
先行くぞー。
ダメ押しのようにそう言うと、ようやくはぁ、とため息をついた茅華はとぼとぼと僕の後をついてきた。
佐藤茅華
佐藤茅華
美味しー!
母さん
あら、そう!?茅華ちゃん、いっつもそう言ってくれるから嬉しいわぁ。
佐藤茅華
佐藤茅華
そりゃあ、いっつも美味しいですから!
このやり取り、何万回聞いたのだろう。
母さん
そういえば翔人、夏休みに学校に行って何してるの?あんたにかぎって勉強ってわけじゃないでしょ?
端谷翔人
端谷翔人
いや別に。なんも。
寝てるだけである。
佐藤茅華
佐藤茅華
ずっーーと寝てるだけなんです!
母さん
そんな勿体ないことしてるの?母さんに弁当まで作らせて?せめてなんかしなさいよあんた!
佐藤茅華
佐藤茅華
私もほんとにそー思いまーす!
母さん
勉強しないなら、体動かしなさい体!バスケまた始めれば良いじゃない!あんなに好きだったんだから!
勝手に騒ぎやがって。
端谷翔人
端谷翔人
……バスケなんかしねーよ。
母さん
あんなに好きだったじゃないの。ねぇ?茅華ちゃん。
端谷翔人
端谷翔人
ご馳走様。
カレーを平らげ、席を立つ。
佐藤茅華
佐藤茅華
はやっ!よく噛まないとダメでしょ!
こいつは俺の親か。
って、もう親でもそんなこと言わないのに。
端谷翔人
端谷翔人
そーいや茅華。夏休みの宿題終わった?
佐藤茅華
佐藤茅華
ん?終わったけど?
茅華はハッとして付け足した。
佐藤茅華
佐藤茅華
嫌ですよ。
端谷翔人
端谷翔人
後でお前ん家行くわ。
絶対嫌だからね!という声が後ろから聞こえるが、無視して2階へ上がった。
端谷翔人
端谷翔人
なぁ。ここなんて書いてあんの?0?6?わっっかんねぇなぁ。字汚すぎ。お前。
佐藤茅華
佐藤茅華
じゃあ、見なきゃいいでしょ!返してよ!
端谷翔人
端谷翔人
ごめんごめん。6だよな~。わかってるよ。
佐藤茅華
佐藤茅華
0です。
昔から夏休みの宿題は、毎年茅華に見せてもらっている。
放っておくとギリギリまで手をつけない僕とちがって、茅華は休みに入った途端に終わらせてしまう優等生だからだ。
夏の夜独特の雰囲気が辺りに漂う中、黙々と作業を続ける。
佐藤茅華
佐藤茅華
あ。そーいえば。
宿題を写し始めて1時間ほど経過した頃、茅華が話し始める。
佐藤茅華
佐藤茅華
『プレンド』って知ってる?
端谷翔人
端谷翔人
なにそれ。
茅華は笑って言う。
佐藤茅華
佐藤茅華
あぁ。やっぱり知らないんだ!翔人、友達いないから。
端谷翔人
端谷翔人
余計なお世話だ。
また、0か6か分からない答えがあったので飛ばす。
佐藤茅華
佐藤茅華
プレンドって『Play with Friend』の略称でね、LIME専用のAIアカウントなの。グループに招待するとそのグループに参加している人全員のその日の運勢を占ってくれたり、会話とか、ゲームをしてくれるの。面白いって流行ってるんだよ!
端谷翔人
端谷翔人
ヘェ~。
佐藤茅華
佐藤茅華
中高生で知らない子はほとんどいないんじゃないかなぁ。
端谷翔人
端谷翔人
ヘェ~。
まただ。0か6か分からない。
でもきっとこれ聞いたら怒るんだろうな。
うん。
飛ばそう。
佐藤茅華
佐藤茅華
ねぇ。聞いてる?
端谷翔人
端谷翔人
あぁ。聞いてる聞いてる。
佐藤茅華
佐藤茅華
ったく。それでね、これを内海くんも誘って3人でやってみない?
女子は本当にこういうのが好きだよな。理解できないわ。
喉元まで出かかったが、なんとか飲み込む。
端谷翔人
端谷翔人
お前、他に友達たくさんいるだろ。なんで俺らなんだよ。
佐藤茅華
佐藤茅華
いいから!はい!グループ作っといたから、内海くん招待しといてね!
端谷翔人
端谷翔人
なんで勝也なんだよ。あ、じゃあその代わりさ、このワーク、貸してくんない?
佐藤茅華
佐藤茅華
え。……。ん~。まぁ。いいけど。無くさないでよね!!
ふと茅華を見ると、少し顔が赤くなっていた。
きっと暑くてしょうがないんだろう。
エアコンの温度を少し下げる。
僕のスマホには茅華からのグールプ招待の通知が来ていた。
タップしてみてみると確かに、「Play with Friend」と言う名前のアカウントが参加している。
アイコンは、晴れた空に1つの雲が浮かんでいる写真だった。

この時はまだ、その浮雲が雨を呼び、雷を呼び、僕たちを襲うだなんて知りもしなかったんだ。

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