第14話

思わせぶりなこと言わないでくれますか?
776
2023/06/17 11:00
こうして私と先輩は、昼ご飯を食べる場所を探したのはいいのだけど。
スタッフ
申し訳ございません、現在満席で
スタッフ
現在の予約状況だと、次に空席になるのは一時間後になるかと思います
波風卓人
波風卓人
そうですか……
休みのせいで、席の空いている店がなかなか見つからないでいた。
波風卓人
波風卓人
うーん、悪いなあなた
波風卓人
波風卓人
一か所くらい、ゆっくり食べられる店が見つかるかと思ったんだけど
あなた

気にしないでくださいよ

あなた

休みの日ってどうしても人が多いですし

あなた

(うーん、お腹は空いてきたけど)

あなた

(ここでそれを言っちゃ、余計な気を遣わせちゃうもんなあ)

あなた

(ああ、そうだ)

あなた

もういっそのこと、テイクアウトして公園で食べませんか?

あなた

さすがに公園だったら、どこかベンチが空いてると思いますし

あなた

最悪の場合は芝生で座って食べればいいですし

波風卓人
波風卓人
そりゃ俺はそれでかまわないけど
波風卓人
波風卓人
あなたの服は大丈夫なのか?
あなた

(あー……先輩が空いてる店探してくれてたのは)

あなた

(私のおろしたての服が汚れないように気を遣ってかあ)

あなた

(そういうところが、憎めないんだよなあ……)

あなた

大丈夫ですよ、汚れたら洗えばいいんですし

あなた

テイクアウト頼める店を探しましょう

波風卓人
波風卓人
おう
というわけで、私たちは手作りハンバーガー屋でテイクアウトして、公園で食べることにした。
芝生の広がっているエリアに行き、そこの木陰でハンバーガーセットを広げて食べはじめる。
あなた

あんなところに、手作りハンバーガーの店があるなんて知りませんでした

あなた

この店のフライドポテト……ものすっごくおいしいです

波風卓人
波風卓人
そうだろそうだろ?
波風卓人
波風卓人
あの店はハンバーガーに合うようにって、コーラまで手作りしているから
波風卓人
波風卓人
全部一緒に食べると美味いんだよなあ
先輩が教えてくれた店は、なにもかもがびっくりするくらいおいしかった。
あなた

(照り焼きハンバーガーも噛めば噛むほどおいしいし……)

あなた

(手作りコーラ、市販のものよりも味わいが複雑なのに後味すっきり)

あなた

(それがハンバーガーやフライドポテトの脂っぽさをさっぱりさせてくれる……)

あなた

(そこまで考えてハンバーガーを食べたことないのに)

ふたりで夢中でハンバーガーを食べているとき、ふと視線に気付いて顔を上げる。
男の子
……
小さい男の子だった。
波風卓人
波風卓人
うん? どうした君
波風卓人
波風卓人
親御さんは?
男の子
しらない。おかあさん、まいご
あなた

(それは多分、この子のほうが迷子になってるんだと思う)

そう思っていたら。
グー。
お腹の虫の鳴く音が響いた。
あなた

(お腹空かせてるんだ)

波風卓人
波風卓人
君、昼ご飯はもう食べたか?
男の子
まいごのおかあさんがみつかったら、いっしょにたべようとおもってたの
波風卓人
波風卓人
そっか。ああ……俺のフライドポテト食べるか?
男の子
たべるぅー
あなた

私のもいる?

男の子
いるー
よっぽどお腹空かせていたのか、私と波風先輩のあげたフライドポテトはあっという間になくなってしまった。
あなた

しかしどうしましょう

あなた

この辺りに交番はありましたかね

波風卓人
波風卓人
なあ、君はお母さんと一緒にどこに行こうとしてたんだい?
男の子
こうえんでバドミントンするよていだったの
波風卓人
波風卓人
あー……だとしたら、公園から離れないほうがいいのか
波風先輩は困ったように頬を引っ掻いている。
お腹いっぱいになったせいか、男の子はにこにこしている。
あなた

(うーん、きっとお母様は血相変えて捜し回っているだろうし)

あなた

(早くお母様のところに帰してあげたほうがいいよね)

あなた

先輩、いっそ捜しに行ったほうがよくないですか?

波風卓人
波風卓人
とは言ってもなあ……バドミントンができる場所はこの公園だと結構あちこちあるから
波風卓人
波風卓人
下手に動き回ったら、すれ違うかもしれないし
あなた

でもこの辺りに交番がない以上、連れて行ったら余計に見つからないかもしれないじゃないですか

あなた

公園が目的地なんでしたら、ここのどこかにはいるでしょうし

波風卓人
波風卓人
そうだなあ……
波風卓人
波風卓人
じゃあ君、ちょっと兄さんが肩車してやろうか
男の子
うん

こうして波風先輩が迷子を肩車して、お母様を捜すことになった。
波風卓人
波風卓人
お母さーん、お母さーん
男の子
おかあさーん、おかあさーん
あなた

(この子、すっかり先輩に肩車されて、上機嫌になってるなあ)

あなた

あのう、先輩

あなた

ふたりで固まって捜すより、手分けしたほうがよくないですか?

あなた

私がスマホでこの子の写真撮って、迷子がいるって捜すとか

波風卓人
波風卓人
うーん、それだと俺が人さらいみたいに勘違いされないか?
波風卓人
波風卓人
それにあなたが隣にいてくれたほうが、親御さんも安心するだろ
あなた

そうですか……

私たちがふたりが公園をぐるぐると回っていたら。
男の子
あっ、おかあさーん
まあ!
男の子の呼びかけに気付いた女性がこちらに駆け寄ってくる。
波風先輩が降ろしてあげると、お母様は男の子を抱きしめて何度もこちらに頭を下げた。
ああ、本当にありがとうございます!
デートの邪魔をしてしまって、すみませんでした!
あなた

い、いえ! 別にデートじゃありませんで……

波風卓人
波風卓人
いえいえ。こういうデートもなかなかだと思いましたから、お気になさらず
波風卓人
波風卓人
君も次からは、お母さんから目を離しちゃ駄目だぞ
男の子
はーい。バイバーイ
こうして私たちは、親子と別れた。
あなた

(先輩……これ、本当にデートだったんですか?)

あなた

(それともそう言われたから、返しただけ?)

私がひとり悶々と考えていると、急に鳥肌が立った。
あなた

……なんか急に寒くなりました?

波風卓人
波風卓人
ええ?
波風卓人
波風卓人
今日は適温だと思うけど
あなた

ええ……?

あなた

(こんなに悪寒がするのに……?)

あなた

(風邪? でも急に風邪をひくような心当たりなんて……)

ブルブルと震えていたら、波風先輩は急に私の前髪をかきわけて手を押し当ててきた。
波風卓人
波風卓人
ん-……熱はないよな
あなた

…………っ!

あなた

(この人本当にそういうことサラリとするからあ!)

波風卓人
波風卓人
あなた、寒い以外になにか具合悪いとかはあるか?
あなた

……ないですけど

波風卓人
波風卓人
なんだろうな、原因不明だし
波風卓人
波風卓人
体の具合が悪くなるといけないから、もう帰るか?
あなた

すみません……せっかく誘ってくれたのに

波風卓人
波風卓人
気にするな。俺のわがままに付き合ってくれただけだろう?
あなた

(この人、本当にズルイ……!)

結局私は、波風先輩に家まで送ってもらったのだ。
波風卓人
波風卓人
じゃあな、具合悪くなる前にちゃんと寝るんだぞ
あなた

わかってますってば

あなた

今日、本当に楽しかったです

波風卓人
波風卓人
そうだな。じゃあ今度はあなたの好きなところに行くか
あなた

(それだと本当にデートになっちゃいますよ)

先輩を見送ってから、家に入った。
私は着替えながら、何気なくスマホで今日撮った写真を見る。
あなた

(楽しかった……)

あなた

(前世だったら、異性の先輩どころか、友達と休みの日に遊びに行くことすらなかったもんね……)

そう今日のことを思い返していたけれど。
脱出ゲームのスタッフに撮ってもらった写真を見て、固まった。
あなた

え……?

あなた

写真……真っ黒……?

あなた

(今まで撮った心霊写真ですら、こんな写真が撮れたことなんてなかったのに)

あなた

(スタッフさんの失敗? でも……)

あなた

(こんなクレヨンで塗り潰したような写真なんて、失敗では撮れないよ……)

必死でそれらしい原因を考えるものの、悪寒はおさまるどころか悪化する一方だった。

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