第18話

前世とのお別れ……どうしてそこまで?
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2023/07/15 11:00
波風先輩に手を引かれて、登下校や近所の買い物でもあんまり通らないような路地を歩く。
いつもより狭い歩幅でゆっくり歩いてくれているし、用意してくれていたスポーツドリンクを飲みながらなので、熱が出ている割にはきつくない。
あなた

先輩……治すってどこに行くんですか?

あなた

私の霊感なんて、どうやって治せばいいのか知りませんよ

波風卓人
波風卓人
うーん
波風卓人
波風卓人
もしあなたが俺の七不思議解明のせいで、落ち着いていた霊感がぶり返してたら申し訳ないから
波風卓人
波風卓人
俺の周りの人にも聞いてみたんだよ、これどうにかならないかって
あなた

まさか私の霊感のこと、誰かに言ったんですか!?

波風卓人
波風卓人
言ってない言ってない
波風卓人
波風卓人
ただうちに依頼に来た面々に、霊感で困っている知り合いがいるけどどうしようって相談に乗ってもらっただけ
あなた

(あー……先輩が七不思議の解明のためにうろうろしてたの知ってるから)

あなた

(誰もそんな突拍子もないこと聞いても不思議には思わないんだ……)

あなた

(先輩、突拍子もない行動取る割には、妙に人徳があるから……)

波風卓人
波風卓人
そしたらさあ、うちの近所にある神社に行ってみたらどうだって言われたんだよ
あなた

神社って……私、霊感が戻ってからすぐに神社に行きましたけど

あなた

全然効きませんでしたよ?

波風卓人
波風卓人
なんでもなあ、それを教えてくれた奴曰く
波風卓人
波風卓人
その神社では絶対に結婚式をやるなって言われているレベルの
波風卓人
波風卓人
縁切り神社らしいんだよ
波風卓人
波風卓人
そこで霊感と縁を切ったらどうかと
あなた

……縁切り神社、ですかあ

あなた

(そういえば、有名な縁切り神社は)

あなた

(用事もないのに行っては駄目って言われているんだっけ)

あなた

(前世ではそんな場所、近所になくって結局行ったことなかったな)

あなた

(でも……)

あなた

先輩、それでいいんですか?

波風卓人
波風卓人
なにがだ?
あなた

私それで霊感なくなったら、もう心霊写真撮れなくなるじゃないですか

あなた

それ、もう私が探偵部にいる意味、なくないですか?

私の訴えを、波風先輩はきょとんとした顔で聞いている。
波風卓人
波風卓人
ん-?
波風卓人
波風卓人
たしかに君が撮ってくれる心霊写真はありがたかったけど
波風卓人
波風卓人
それがどうして、君が必要ないって話になるんだ?
あなた

だって、先輩が私を探偵部に引き抜いたのだって、心霊写真が撮れるからじゃないですか……

波風卓人
波風卓人
そりゃ俺は、学園七不思議を解明できればとは思っているが
波風卓人
波風卓人
部員を危険にさらしてまでする活動じゃないだろ
あなた

普段さんざん人のこと振り回す癖に、なんで変なところで常識人みたいなこと言うんですかあ!?

波風卓人
波風卓人
というよりおかしな話だろ
波風卓人
波風卓人
便利だから君を部員として置いておくって、君は別に物じゃないだろ
波風卓人
波風卓人
俺はあなたといるのが楽しいから、部員として一緒に活動してもらってるのに
波風卓人
波風卓人
その部員を苦しませる霊感に固執すると思うか?
波風卓人
波風卓人
苦しんでるんだったら、その苦しみを和らげたいのが、普通じゃないのか?
あなた

……っっ!

あなた

(だから先輩は、どうしてこうもサラリとすごいことが言えるの!?)

あなた

(乙女ゲームの攻略対象でもないのに!)

あなた

(なんでそう、勘違いしそうなこと言えるの!)

波風卓人
波風卓人
うん? まだ熱がしんどいか?
波風卓人
波風卓人
さっきから顔がまた一段と真っ赤になってきたけど……
波風卓人
波風卓人
新しいスポーツドリンク飲むか?
あなた

違いますから!

あなた

これ多分、霊感も熱も関係ないですから、スポーツドリンク飲んでも治りません!

波風卓人
波風卓人
そうか……
そう言いながらも、先輩は決して私の手を離さなかった。
それが少しだけ心地がいい。
あなた

(神社に行ったら、私の霊感がなくなるかもしれない)

あなた

(そうしたら、もう先輩の七不思議解明の訳には立てなくなるかもしれないけど……)

あなた

(部活辞めなくってもいいなら、まあいいか)

あなた

そういえば先輩、その問題の縁切り神社っていつ着くんですか?

波風卓人
波風卓人
うーんと、ここの坂を登り切ったらすぐなんだと
波風卓人
波風卓人
けっこうきつい坂だけど、大丈夫か?
あなた

うーんと、大丈夫です

波風卓人
波風卓人
そうか。じゃあ行こう
あなた

はい

そうして私たちは手をつないだまま、目的地に向かう坂を登りはじめた。

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