第10話

探偵を尾行せよ……って無理ゲーです?
1,005
2023/05/20 11:00
波風卓人
波風卓人
【すまん。今日も部活は休みだ】
あなた

はあ……

あなた

(アプリで連絡くれるのはいいけど、謝られるのこれで何度目だろう)

あなた

(あれから先輩、全然部活に顔を出さないけど、本当になに?)

あなた

(彼女さんからの連絡?)

あなた

(探偵稼業? 部活以外で?)

あなた

(全然わっかんないよ……)

あなた

(前世でいくら乙女ゲームやってきたからって、人の気持ちを上手く汲み取れる訳じゃないし……)

あなた

(……でも、なにもしないよりはマシかなあ)

私は意を決して、放課後。
波風先輩を尾行してみることにした。
男子生徒
それじゃあな
波風卓人
波風卓人
じゃあな!
あなた

(相変わらずあの人、友達多いな……)

あなた

(でも本当に顔面偏差値がいい割に女子にはモテてない……)

あなた

(あの人の言動がおかしく見えるのかな?)

あなた

(……否定できない)

あなた

(でも、だとしたら学校の外で彼女がいるって線もなくなるのかな?)

あなた

(いやいや……)

ひとりで妄想している間に、見慣れた姿は忽然と姿を消してしまった。
あなた

しまった!!

叫んだところで、後の祭りだ。

そんなこんなで、尾行しては見失い、尾行しては見失いを三日間繰り返し、私は机に突っ伏していた。
あなた

なんで見失っちゃうの……

あなた

学校の外では、案外普通だから……?

あなた

(校内だったら、割と動きがおかしいから見失うことないんだけどな)

あなた

(学校の外に出たら、あんな格好つけた動きしないし……)

あなた

(私……本当に波風先輩のこと、校内の姿しか知らなかったんだな)

私が突っ伏してへこんでいると、寿葉ちゃんがおそるおそる声をかけてきた。
浜中島寿葉
浜中島寿葉
うーんと、あなたちゃん。波風先輩を尾行しているのはなんでかな?
あなた

なんでって、どうして部活をずっと休んでいるのかわからないから、尾行して理由を知りたいなと思って

浜中島寿葉
浜中島寿葉
それなんだけど
浜中島寿葉
浜中島寿葉
あなたちゃん、いくら探偵部に入っているからって、波風先輩のマネをしなくってもいいじゃない
あなた

え……私、別に先輩のマネをしたつもりは……

浜中島寿葉
浜中島寿葉
だって普通にアプリのIDとか交換してるんでしょ?
浜中島寿葉
浜中島寿葉
なら直接聞けばいいじゃない
あなた

……それって、迷惑にならないかな?

浜中島寿葉
浜中島寿葉
うーんと、あなたちゃん
浜中島寿葉
浜中島寿葉
相手にどう思われてもかまわないって、好き勝手行動するより
浜中島寿葉
浜中島寿葉
相手に嫌われたくないけれど、相手のことをもっと知りたいって考えて悩む方が
浜中島寿葉
浜中島寿葉
相手のことを大切にしてるんじゃないかな
あなた

寿葉ちゃん……

浜中島寿葉
浜中島寿葉
嫌われたくないって考えて行動取るのは、当たり前だと思うよ?
浜中島寿葉
浜中島寿葉
ファイト、オー
あなた

お、おー?

あなた

(またしても、寿葉ちゃんに応援されてしまった……)

あなた

(でもそうだよね、ひとりで空回って尾行失敗し続けるより、直接聞きに行ったほうがいいか……)

そんな訳で、その日の放課後。
私は先輩の教室の前に立っていた。
男子生徒
バイバイ
波風卓人
波風卓人
また明日なー
あなた

あ、あの、先輩!

波風卓人
波風卓人
おっ、あなた。すまんな、今日も部活が休みで
あなた

そ、そのことなんですけど……

あなた

先輩、このところどうして急いで帰るんですか?

波風卓人
波風卓人
うーん、どうって言われても、用事で急いでるからとしか言えないんだが
あなた

それって、部活を休み続けるようなことですか?

波風卓人
波風卓人
そうだなあ……これはちょっと、学校の外に出てから話してもいいか?
あなた

えっ

波風先輩は、私と一緒に校門を出ると、辺りを窺ってからようやく口を開いた。
波風卓人
波風卓人
ええっと、まずはすまん。理由も言わずに休み続けて
あなた

いえ。単純にどうしてだろうって思ってただけなんで

波風卓人
波風卓人
まず学校の中で言えなかったのは、あんまり気分のいい話じゃないからだな
波風卓人
波風卓人
一応、担任の先生には伝えている話だけど他には知られていないから
あなた

はあ……

あなた

(この流れからすると、恋愛みたいな浮ついた話ではなさそうだけど)

あなた

(でも気分のいい話じゃないって、どういう……?)

あなた

それは……あのう、私に言っていいんですか?

波風卓人
波風卓人
うーん、だってあなた。この間から放課後俺の周りをうろうろしてただろ?
あなた

うっ……

あなた

(バレてた……)

波風卓人
波風卓人
そこまで心配かけてるんだったら、もう隠して遠巻きにするよりも、一緒に行ったほうが早いかなと思ったんだよ
波風卓人
波風卓人
ただ最初にも言ったけど、あんまり気分のいい話でもないし、学校では内緒な
そう言って波風先輩は、しぃーと黙らせるジェスチャーをした。
こうして、私たちは初めて学校の外で一緒に行動することになったのだった。

プリ小説オーディオドラマ