第17話

探偵って諦めが悪すぎませんか?
682
2023/07/08 11:00
私が学校を休みはじめてから、一週間経った。
とっくの昔に波風先輩のお見舞い品は食べきってしまったし、状況はちっともよくならない。
浜中島寿葉
浜中島寿葉
【まだ熱引かないの?】
浜中島寿葉
浜中島寿葉
【ノートは全部写真に撮って送るけど……】
浜中島寿葉
浜中島寿葉
【心配だからお見舞いに行っちゃ駄目?】
あなた

【悪いよ、本当に原因不明だから寿葉ちゃんに伝染ったら困るし】

あなた

【ノートいつもありがとうね】

休んでいる間は、ずっとアプリで寿葉ちゃんとやり取りをしているけれど。
あなた

(本当に全然熱が下がらないし……)

あなた

(最近はずっとラップ音もポルターガイスト現象も続いているから)

あなた

(そんなところに寿葉ちゃんを呼べないよ……)

熱冷ましを飲んでも熱が引かない。
心配したお母さんが会社を休んで、大きな病院に連れて行ってくれたけれど、やっぱりなんの原因を突き止めることもできなかった。
熱が出ている以外はあまりにも健康体だったから、入院させることもできず、こうして私はずっと部屋でひとり篭もって寝続けている。
あなた

(それに……あれから先輩、全然連絡してこなくなった)

あなた

(私があんな態度悪く追い出しちゃったから当然だよね……)

あなた

(へこんでも、自業自得が過ぎるし)

お父さんもお母さんも心配していたけれど、まさか霊感が戻って霊障で寝込んでいるなんて言える訳がない。
だから私は今日もひとりでお留守番していた。

気付けば夕方で、熱が出てしんどい体を引きずって、どうにか栄養ゼリーを飲みに行ったところで、家のチャイムが鳴った。
あなた

(誰だろう……)

玄関の魚眼レンズから覗いてみると、そこには波風先輩が立っていた。
あなた

(先輩!? どうして……)

あなた

(あんな失礼な態度取ったから、もう愛想が尽きたと思ってたのに……)

あなた

(でもどうしよう……顔合わせづらいし……)

そのまま居留守を決め込もうかと、足音を殺して自室に逃げ帰ろうとしたものの。
波風卓人
波風卓人
火事だあああああああ…………!!
波風先輩が叫び出した途端に、一斉に近所の人が家から出てきてしまった。
男性
えっ、火事!? どこ!?
女性
ボヤ?
女性
って、煙出てる!!
近所の人たちは大騒ぎだ。
私も思わず魚眼レンズを覗き込んでみると……。
あなた

(ちょっと待って……本当に煙!?)

あなた

(先輩、私を家から出すためだけに、なに火事起こしてるの!?)

あなた

(ああん、もう!)

あなた

先輩、なにやってんですか! 消してくださいよ!!

とうとうたまりかねて玄関から外に出ると、そのまま波風先輩に腕を掴まれてしまう。
波風卓人
波風卓人
おお、ようやく捕まえられた
波風卓人
波風卓人
ひどいよな、この間はいきなり追い出されたし……
あなた

なに言ってんですか、ひどいのはそっちじゃないですか! それより、火は……

波風卓人
波風卓人
ああ、これ?
そう言って波風先輩は煙を見せてくれた。
指に付けて煙を出すおもちゃだった。
波風先輩はニヤニヤ笑いながら、ご近所さんにも声を張り上げる。
波風卓人
波風卓人
お騒がせしてすみませんでしたー! 手品です!
男性
ああ……びっくりした
女性
よかった、火事じゃなくって
ご近所さんが皆ちりぢりになっていくけれど、波風先輩は私の腕を離さないし、私の額に手を押し当ててくる。
波風卓人
波風卓人
うん。まだ熱があるな
波風卓人
波風卓人
本当に全然下がらないんだな?
あなた

……だって、別に病気で熱出してる訳じゃないですし、熱冷ましは効きませんよ

波風卓人
波風卓人
そうかそうか、それにずっとひとりで耐えてたんだな
波風卓人
波風卓人
頑張ったなあ、あなた
あなた

……

あなた

(なんでこの人、あんなひどい別れ方したのに、ここまで優しいこと言えるんだろう)

波風卓人
波風卓人
それじゃ、ちゃんと戸締まりして
あなた

戸締まりって……なんですか?

波風卓人
波風卓人
これから出かけるぞ
あなた

はあ? 私、熱出てフラフラしてるんですけど

波風卓人
波風卓人
でもこれ、熱冷ましは全く効かないって今自分で言っただろうが
波風卓人
波風卓人
なら治るとこに行こうじゃないか
あなた

治るって……無理ですよ、こんなの……

あなた

今までだって、治せたことないんですから……

波風卓人
波風卓人
ふっふっふ。探偵っていうのはなあ、基本的に諦めが悪いんだよ
波風卓人
波風卓人
諦めが悪くないと、事件を解決させるなんてできないだろう?
波風卓人
波風卓人
ほら、出かける用意して
あなた

横暴……

あなた

(本当に勝手過ぎる)

あなた

(でもこの人、いっつもこうだった)

あなた

(それで安心している私は、本当どうかしてる)

こうして、私たちは出かけることになったのだった。

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