転落していく。
ガードレールを越えた先はコンクリート。落ちたら間違いなく助からない。
小さい頃から、私は霊感体質だった。
幽霊が見えるのは当たり前。
なにかあったらすぐにラップ音が響き渡り、ポルターガイスト現象が起こる。
周りの人は気持ち悪がって、気付いたら私はいつもひとりだった。
登下校中に見かけるカップルや友達グループが羨ましくて、気付けばゲームに逃げていた。
特に夢中になったのは、青春乙女ゲームだった。
私が今、転落しているのは、霊障のせいだ。
大学の通学路の坂道を歩いていたら、幽霊に取り憑かれてしまって、そのまんまガードレールの向こうへとダイブ。
体が言うことを聞かなくって、叫んで助けを求めることさえ、できないでいる……。
だんだん地面が近付いてきた。
痛いのは嫌だなあと、私は必死で目を閉じた。
幽霊になって、そのまま未練たらしくさまようのはごめんだった。
高所からコンクリートに向かって落ちたのに、体がちっとも痛くない。
おまけに気のせいか、目の前がクリアな気がする……。
私は慌てて起き上がって気が付いた。
目の前に制服がかかっている。
私はうきうきしながら、制服に袖を通した。
『青春フォトグラファー』
タイトル通り、写真を通して青春を謳歌しようってコンセプトの乙女ゲームだ。
私は学校に到着し、早速新聞部へと向かっていった。
私は渡されたデジカメを持って、うきうきしながら、他の新聞部の新入部員と一緒に写真を撮った。
たしかに攻略対象の男子もいるなあとニコニコして、そのまま新聞部の部室に戻る。
部長に言われるがまま、私たちは順番待ちして、プリンターで写真を印刷していく。
私も意気揚々と印刷していくけれど……。
出来上がった写真を見た部員から悲鳴が上がる。
私はプリンターから出てきた写真を見る。
思わず悲鳴を上げるしかなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。