第15話

現世こそ普通に生きたいんですが?
742
2023/06/24 11:00
波風先輩と出かけた翌朝。
寝ても全然体調は回復しなかった。
むしろ重くて熱くて苦しい。
あなた

嘘……

体温計で測ってみると、平熱よりずいぶん高い数字がそこに並んでいた。
寒い寒いと思ったら、熱が出ていたのだ。
あらあなた、風邪?
ちょっと高熱じゃない。病院行く?
あなた

そうする……

学校には連絡しておくから、さっさと行ってらっしゃい
お母さんお仕事あるけど、休んだほうがいい?
あなた

大丈夫だよ、病院行って帰ったら大人しくしてるから……

学校にはお母さんに連絡をしてもらい、私はふらふらする体でどうにか近所の病院に行くことにした。
でも……。
医者
熱出てますけど、風邪ではないですね?
医者
一応点滴打って熱さましは出しますけど
医者
もし効かないようなら、またすぐに来てくださいね
あなた

わかりました……

お医者さんにも困惑されてしまい、私は熱で朦朧としながら、点滴を打ってもらうことにした。
あなた

(昨日の今日で、いきなり高熱って……)

あなた

(昨日撮った写真が真っ黒だったことといい、謎の悪寒といい……)

あなた

(ものすごく覚えがあるんだけど、まさか……)

お医者さんに熱さましを出してもらい、フラフラしながら帰る途中。
私は道路の端を凝視した。
あなた

あ……

現世になってから、肉眼では一度もお目にかかることのなかった幽霊が、はっきりと見えているのだ。

前世では当たり前のように見えていたし。
そのせいか悪いものを引き寄せてしまっていた。
あなた

(やっぱり……私)

あなた

(前世の霊感戻ってる……)

どこで戻ったのかはわからない。
脱出ゲーム中も違和感はなかったし、七不思議を追いかけていても、心霊写真以外ではなにもなかった。
思い当たることはなにもない。
あなた

(熱が出てるってことは、これどこかで霊障に当たったんだ)

あなた

(これじゃ熱さましだって全然効かないよ……)

あなた

(神社……この辺りだとどこにあったっけ)

私は真っ直ぐに家に帰ることを諦め、フラフラしながら神社へと向かった。
神社で鈴を鳴らして手を合わせたあと、お守りを買って帰る。
あなた

(お守りだって気休めかもしれないけど……)

あなた

(なにもないよりはマシ)

あなた

(……乙女ゲームの世界でまで、霊感でひどい目になんて遭いたくなかったなあ)

あと少しで家に帰れると思ったとき。

パキンと音がした。
驚いて肩にかけていたカバンの中身を確認したら、先程買ったばかりのお守りが割れていた。
あなた

(……駄目だ、神社のお守りもすぐに壊れてちゃ意味がない)

あなた

(どうしよう……またなにか起こるの?)

前世のことを思い出し、ブルリと身を震わせた。

歩いているだけで幽霊を引き寄せてしまう私の周りでは、変な現象が多発していた。

唐突なラップ音。
不自然に巻き起こるポルターガイスト現象。
あなた

(友達もいて、部活も楽しくって)

あなた

(……好きな人がいて)

あなた

(私、生まれ変わっても、そんな日常すらも送っちゃいけないの?)

悲しくなりながらも、効かない熱さましを飲んでから布団に入ったとき。
スマホ画面が光って新着メッセージがあることを教えてくれた。
波風卓人
波風卓人
【昨日体調不良で帰ったけど、そのあとどうだ?】
あなた

(先輩……心配してくれてるのかな)

どう返事しようと考えながら、言葉を選ぶ。
あなた

【急に熱出して寝てます】

あなた

【しばらく学校に行けないかもしれません】

あなた

(嘘は言ってないもんね……)

あなた

(まさか霊障だなんて、言えないし……)

波風卓人
波風卓人
【それ大丈夫なのか?】
波風卓人
波風卓人
【放課後、君の家に寄るから】
あなた

【結構ですよ、寝てれば治ります】

波風卓人
波風卓人
【寝て治るなら、しばらく学校に行けないなんて言わないだろ】
波風卓人
波風卓人
【待ってろ、行くから】
あなた

(先輩……こういうときだけどうして察しがいいんですかあ……)

嬉しいという気持ちと一緒に、冷たいものが胸を満たす。
あなた

(霊感のせいで、変なものを引き寄せているのに)

あなた

(先輩まで巻き込んでひどい目に遭わせることになったら……)

あなた

(立ち直れないから、来ないで欲しい……)

そこまで考えて、ふて寝を決め込んでしまった。

寝て起きてを繰り返し。
しんどさの中まどろんでいるところで。
家のチャイムが鳴った。
あなた

はい

波風卓人
波風卓人
『来たぞ』
ドラッグストアの袋をぶら提げた波風先輩が、うちの前に立っていた。

プリ小説オーディオドラマ