体験入部はさんざんだった。
私が撮った心霊写真のせいで、阿鼻叫喚となり、当然ながら周りにドン引きされてしまったのだ。
そう言って慰めてくれるのは、浜中島寿葉ちゃん。
『青春フォトグラファー』のナビゲートキャラであり、主人公の親友なのだ。
寿葉ちゃんだけだった、私の写真にドン引きすることなく、逆に慰めてくれるのは。
私がそう、ひとりで黄昏れているときだった。
私が撮影した心霊写真が、風に飛ばされていってしまう。
それを私たちの前を歩いていた男子生徒が、パシンと受け止める。
私がひとりで顔面蒼白している間に、寿葉ちゃんが写真の回収に行ってくれた。
私が口をパクパクさせている間に、波風先輩は私の手を掴んできた。
私は寿葉ちゃんの目の前で、ずるずると波風先輩に引きずられていってしまったのだ。
だから、この人誰だよ。
私が止める間もなく、部長はあっさりと頷いた。
波風先輩は、にこっと笑った。
私の抵抗もむなしく、職員室であっさりと入部届は受理。
なぜか見知らぬ部活に入部させられてしまったのだった……。
答えなんて、出なかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!