何年前だったか。
俺が中学生の頃だから、もう10年以上前の今日。
花火大会の日に、彼女は逝ってしまった。
不幸な事故だった。
それ以来、彼女は夏祭りの日にだけ姿を現す。
毎年違う浴衣で、でもその合わせは死人のそれで。
所詮幽霊。俺と、霊感のある人にしか見えないし、本人は何にも触れることは出来ない。
それでも彼女は毎年俺を待っていてくれるから、俺はこの祭りに毎年足を運んでしまうのだ。
彼女と別れた後はとても虚しくなる。
悲しくなる。
それでも、たった数時間、夏の一日の思い出のために、俺たちはこの場所で再会する。
これが、俺と彼女の夏祭り。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。