第3話

火の花は別れの合図
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2018/07/25 23:35
花火が始まって、それを俺たちは人混みから離れた所で見る。
ベストポジションで見るより幾分もしょぼいのだろうけれど、大きな火の花は俺たちの顔にも平等に光を落とす。

1時間半程のプログラムは順調に進み、ついにクライマックスまであと少しとなった。
俺たちは人の波に逆らって、待ち合わせ場所に戻る。
毎年、最後の花火はここで見て、そのあと彼女と別れるのだ。


2人で、空を見上げる。
今日1番の大きさの花火が、夜空にその花弁を開く。

チラと彼女の方を見ると、彼女の白く透明な肌が花火の光を受けて、オレンジがかっていた。
今までフワフワしていた彼女の輪郭が、急に実体を持ったように見えて、無意識に、彼女の手を握ろうとする。
俺の手は、彼女の手をすり抜け空を切る。
その気配を感じた彼女がこちらを見て、寂しそうに笑う。

「花火、終わっちゃったね。
しばらくお別れかぁ。寂しいけど、また来年」

彼女の姿が薄くなって消える。
まるで空気に溶けてしまったかのようだ。
辺りには、祭り帰りの人々の喧騒だけが残った。

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