第18話

ツンデレちゃんのヤキモチ4
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2019/07/24 03:46
伊達工との練習試合の日。

私は間違ってもけんちゃんと鉢合わせしないように早めに家を出た。

…まぁ結局顔を合わせなきゃいけないんだけどね。

いつもは嬉しいことが今はとても憂鬱だった。

学校に着き、体育館に行くと華さんがいた。

「華さんっ!おはようございます!」

「あ、あなたちゃん!おはよ!はやいね」

「華さんこそっ!今日テストでしたよね?」

「そうなの。でもなんか心配なんだよね。あいつら」

華さん…自分以上に部活を大切にしてるんですね。

「私が華さんを引き継いで頑張ります!」

華さんは目を丸くした後、ニコッと笑って

「それは頼もしいな」

うわ、可愛い。私もこんな可愛かったらな。

そうして華さんは教室に向かって、私は練習試合の準備を進めた。

部員達も来て、気持ちも高ぶってきた。

すると体育館の入口から

『失礼しあァァす!!!!』

と声が聞こえた。

「伊達工来たから整列して挨拶いくぞ」

伊達工の前に整列し始める。

けんちゃんが照島さんと睨みあっていた。

ふいに目があった。

けんちゃんは目を見開き、何か言おうとして口を開きかけたが隣の背の高い眉毛のない人に腕を掴まれていた。

はっとして、目をそらされた。

ズキンッ

胸が痛む。

そこから挨拶をし、練習試合が始まった。

始まってからはそんなことを考える余裕も無くなり、ドリンク作り、点付け、洗濯などでばたばたしていた。

スコアをかくとき、ついついけんちゃんに視線がいってしまうのは気のせいだ、といいきかせて。

練習試合も終わり、片付けをしていると照島さんの声が聞こえた。

「きみ可愛いねー!LINE教えてよー!」

「いえっ、そういうのはちょっと…」

「えぇーいいじゃーん」

伊達工のマネージャーに言いよっていた。

なにしてんのてるしまー!!

「照島っ!華さんに怒られるよ!!もーおバカー」

「あなたちゃんっ!華さんの名前出すのはずるいー」

「伊達工のマネさんごめんなさいっ!ほら、照島も」

「へいへい、ごめんねーてか今呼び捨てで呼べたじゃんー」

そんなこんなで片付けに戻ろうとした時

「なにしてんの?」

低く、冷たく、聞いたことのある大好きな声が聞こえた。

「うちのマネージャーがお世話になって」

そう言いながらさりげなくマネさんを自分の後ろにかくし、

「だから言ったのに。滑津はとりあえず青根のとこ行っとけ」

そう言ってから私をみて

「マネージャーなんだったらちゃんとソイツのこと見とけよ」

そう言い残し片付けに戻ろうとしたけんちゃんを照島が止めた。

「は?おいお前いまなんつった?」

「あ?」

「あなたは関係ねぇだろ」

「はっ、関係ねぇのはこっちだわ。なぁあなた。どうせ男目当てなんだろ。よかったな」

「…」

そんな風に思われてたんだ。そっか。そうだよね。あんなこと言ったんだもん。

2人が目をまるくした。

あぁ、私泣いてるんだ。しかも止まりそうにないや。

「…ッ!!あなた…」

「気安く名前よんでんじゃねぇよ」

初めて聞く照島の怒ったような声。それが聞こえると同時に照島に腕を引かれ腕の中に。抱きしめられた。

涙が止まり始め、心臓の音がうるさくなる。

「おい、二口。お前とあなたがどんな関係かなんて俺には知らねぇし興味もねぇよ。けどこいつがどんなに頑張ってるか、俺らのためにしてくれてるか、それも分かんねぇでそんなこと言うなら」

「俺が、あなたのこと貰うから」

じゃあ行こーぜ、と手を引っ張られみんなの所に戻る。

一瞬振り返ってけんちゃんの顔を見ると初めて見る、色々な感情が混ざったような表情だった。

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