放課後になり、体育館に向かおうとすると
「あなたー!」
と呼ばれたので振り返ると
「ゆかり!どしたの?」
親友のゆかりがいた。ゆかりはにやにやしながら
「今日か明日ってひま?」
「今日はちょっと予定入ってて…明日だったら!」
「よかったぁ。明日一緒にクレープ食べに行かない?」
「ホント!?行く行く!」
「そんで進展聞かせてよね」
「ふぁっ!?」
あたふたしている私をよそにゆかりは部活行くからまたねーと去っていった。
体育館に着くと、華さんが
「あ、!来てくれてありがと!それでね、今日来てもらったのはバレー部に入ってマネージャーをして欲しいからなの」
「マネージャー、ですか?」
「そう。後釜が見つからなくてね。」
困ったように言う華さん。
「とりあえず見学してみない?」
バレー部、か。けんちゃんと一緒の部活も悪くない、かも?でも
「私、バレーしたことないですし、それに入る理由だって、申し訳ないですし」
私がそう言うと
「私だってそうよ。そんな大袈裟な理由なんてなくていいと思うわ。」
その言葉におされ、見学することにした。
簡単そうに見えるひとつひとつの動きが練習のたまものなんだなぁと思った。
練習が終わり、金髪や茶髪のチャラそうな部員達がわらわらと私の方へやってきた。
「マネージャーやってくれんの?」
「やったー!こんな可愛い子がなってくれるとか」
「LINE教えてよ!LINE!!」
「え、えっと…」
戸惑う私を助けてくれたのは
「こら、あんた達!あなたちゃんこわがってるじゃない!!」
そう言うと彼らはしぶしぶ片付けに戻っていった。
「ごめんね、うちのバカ達が。あ、それでね
これ、予定表と入部届け。よかったら入部して欲しいなって。」
「…はい!入部、してもいいですか?」
そう言うと華さんは
「うん、うん!また詳しいことは明日言うね!ありがとう!」
そう言って学校を出た。
バスに乗り、うとうとしながらバレー部に入部することを決めた自分に驚いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!