~赤葦side~
俺は今ものすごい自己嫌悪に陥っていた。
(あー、やっちゃった。多分俺嫌われてるよな…)
今は休憩中で一人で涼めるところに来ていた。
と同時に昨日のことを後悔していた。
(いや、あの人の場合忘れてたり…するわけないか)
さらに思考を巡らせていると、奥の廊下から珍
しく走ってくる孤爪を見つけた。
「孤爪?どうかしたの?」
「あ、赤葦。ちょっとこっち来てくれない。行きながら説明するよ」
そう言って来た道を戻っていく孤爪について行く。
「で、何があったの。孤爪が走るなんて珍しい。」
するとムスッと頬を膨らませて
「それは今はいいよ。それよりあなた先輩が…」
「弥生先輩!?」
すると孤爪は呆れたように溜息をついて
「うるさい……。ほら、あっち。はやく」
孤爪の指の先を見ると弥生先輩がいた。
「弥生先輩?俺のこと分かりますか?」
駄目だ。これは……
「孤爪、猫又監督と直井コーチに連絡頼む。
俺は弥生先輩を保健室連れてくから」
俺は孤爪の返事も聞かず弥生先輩を保健室に運
んだ。
ベッドに寝かせて首の辺りに氷嚢を当てる。
すると先輩は目を開けた。
「…ん……?赤葦、くん…?」
「そうです!分かりますか?」
すると先輩は目を逸らして
「大丈夫……だから、練習に、戻って…」
やっぱり先輩は俺のこと嫌いなのか…。うすう
す気づいていた事がこんなに辛いなんて。
「嫌です。また倒れたらどうするんですか」
先輩は俺を睨みながら
「別にいいじゃん。赤葦くんには関係ない。……そうやってさ、思わせぶりなことするから勘違いするじゃん。」
「なにそれ。どういう意味ですか。」
「……分かってるくせに。」
今まで先輩と喧嘩と呼べるものをした事の無い
俺は大分戸惑っていた。
するとドアの開く音がした。
「あっ、あなたちゃん〜!大丈夫??ごめんね気づけなくて!」
「ううん…。へーき、だよ。」
雀田先輩だった。
「あ、赤葦。あとあたしがここにいるから試合戻ってやって。木兎がうるさくてね〜
あと……」
あなたちゃんとなんかあったんでしょ?ちょっと頭冷やしてきな
俺にしか聞こえない声でそう言うとさっきまで
俺が座っていた椅子に腰を下ろした。
俺は何も出来ずに保健室を去っていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。