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「凛花~こっちこっち」
駅前のロータリー。
優菜がフリフリと、笑顔で手を振ってる。
最寄りの、一番大きな駅に集合した私達。
圭太の大学生のお兄さんが、黒いミニバンの運転席に座っている。
何でも運転免許をまだ取得出来ない私達の“運転手”兼“保護者”代わりに、今回の企画に同行してくれることになったっていうワケ。
今日のメンバーは、私・優菜・圭太・祥三・それから圭太のお兄さん。
本当はもう二人、来る予定だったんだけど。
一人は風邪、一人は塾の特別講習に無理やり強制参加させられたとか何とかで、このメンバーに。
「美咲も来れたら良かったのにな~~」
祥三が、既に海に行く前からちょっぴり黒い肌をシャツの隙間から覗かせつつ、シートにもたれかかりながら残念そうに言う。
(優菜)「祥三は美咲がいないとイジる相手が居ないもんね」
(祥三)「っそういうワケじゃ、ねーけど」
(優菜)「美咲も今頃ベッドの上で、寂しい想いしながら寝込んでるかもよ?」
(凛花)「あっお土産買って帰ろう、二人に!」
(圭太)「ナイスアイデア凛花」
とか、居ないメンバーのことを気遣いつつ、車体は颯爽と高速を滑ってく。
車内は圭太のお兄さんの車なこともあって、圭太のお気に入りのあれやこれやの音楽がかかってて。
時々お菓子も食べたりしつつ。
2時間弱車を走らせた頃には、すっかり綺麗な海外線が私達を待ってたーーーーー
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。