千冬の両目は見開かれたものの、エメラルドの瞳の動きはピタリと止まっていた。
僅かに沈黙の時間が流れる。
生温い風が2人の肌に吹き付けて、千冬の金髪がサラサラと揺れた。
ツーブロックに分けてある暗髪が風に流されるままに動くのを見ながら、
千冬の答えを静かに待つ。
歩む足を止めた千冬が目を伏せると、
彼より背が低い私でも前髪の影で目元が若干見えなくなってしまった。
(千冬?)
暗い雰囲気を漂わせているその目元に、
(…千冬はやっぱり優しいなぁ。)
私は彼の考えている事を察しても尚、
気にせず話を続けた。
視線をすっかり落としてしまった千冬の正面へと近付くと、彼が反応する前にその肌に触れる。
『グイッ』
額に片手を当てると、そのまま前髪を掻き上げるようにして、
私は千冬の視界に無理矢理入った。
ニッと笑って、千冬の両目から不安の色が消えるように願う。
顔を覗き込んだ状態で、首をこてんと傾げる。
千冬は優しい。
というか、東卍、皆が優しい。
勿論、私の事を気に入らない人間の方が圧倒的に多いけど、
私の事を気にかけてくれている人だって居る。
大丈夫だ、きっと。
うん、大丈夫。
本当は信じたくないから、
そういう現実を直視したくないから、
私を狙っているのが東卍内部の人間だなんて考えたくないから、
目を背けているのは自分でも分かっていた。
私に今くれた千冬の優しさの温かみを感じれば感じる程、それが出鱈目であると考えていたい。
千冬の額に当てていた片手を下ろすと、千冬は自分でサッサッと指先で前髪を直した。
私はそれを横目に入れながら、「千冬の方が余っ程女子力あるって!」と笑いながら先に前へと進む。
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【作者’s 小話🗣💬】
今日 9月4日は柴 八戒のお誕生日ですねっ🎂✨
お誕生日おめでとう!!!
アニメ放送(1期)では聖夜決戦まで行かないけど、
八戒くんの弱さは自分にも思いたる節があって、
自分を見直す良いキッカケになりました。
愛情のカタチって人それぞれだけど、
その深さ故に押し付けたり、押し付けられたりしちゃうものだって分かってるから。
難しいよね…(笑笑)"
モデル体型の長身、
アクロバティックな戦い方も魅力的な八戒くん。
お姉さんの柚葉も大切にして欲しいけど、
お兄さんとの縁も回復することも祈ってる。
八戒くんみたいに、
絶対的な立場の誰かに立ち向かう勇気を最後に出せる人間になりたいなぁ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!