第3話

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2021/06/15 12:00


2週間ぶりに皆に会うのが楽しみで、溢れる笑みを制御出来ない。



ガラ悪い子も、

人相悪い子も、

少し狂ってる子も居るが、


皆良い子達であるのは間違いない。



たまーに過激派が生まれるのと、

変な揉め事を持ち込んで来るのは個人的には寄して欲しいけど。



(…あれ?)

あなた
ありゃ、携帯が無い。
…あ、そっか、家に置きっぱだ。

脱力感が一気に身体中を駆け抜ける。


(あー…最悪だ。早く声聞きたいのに。)




ゆっくりと流れる雲をぼんやりと見つめながら、

頭を空っぽにしている時だった。



千堂 敦(アッくん)
俺達はもうお前らの奴隷じゃねぇ!
清水 将貴(キヨマサ)
あ?ンな事どーでも良いんだよ。


(ん?)

あなた
なに、揉め事?

さっきまで眠りへと誘おうとしていた環境音とは明らかに違う、余裕の無い大きな声が耳に飛び込んで来た。


少し先の橋の下で揉めている数人の男子共に目を凝らす。

見たところ、一方の5人組のグループは近辺の公立中学の制服を着ており、

もう一方は____


あなた
嘘。あれ、東卍じゃん。




なんとも、

彼らは " 東卍 " の特攻服を見に纏っていた。


言ったそばからの揉め事に、私の口からは「えぇ…」という呆れた声が漏れ出た。
あなた
えーっと?メンツは誰だ?

裸眼で目を凝らし続けているが、流石に限界だ。

私は再度サッチェルバッグの中からメガネを取り出すと、急いで掛けた。


小さく浅めに整えられた黒髪のリーゼントに、

口に加えた1本のタバコ。

左手だけをポケットに突っ込んで、片足に体重を掛けた癖のある立ち方。

胸を張って身長の低い相手を見下ろす態度。

あなた
真ん中のガタイの良い奴は多分、パーのとこの " キヨマサ " だと思うけど…



___憶測で判断するのは、あまり好きじゃない。



起き上がるなり、サッチェルバッグを背負ってしまうと、そのまま堤防下の河原の横に並んだ小道へと降りていく。


『スタ、スタ、スタ…』

足を進めながら、以前 " キヨマサ " に会った時に印象的だった特徴を思い出す。



(確か、左部分のおでこから瞼上に掛けて、結構大きなざっくり切った痕があった気がするんだけど。)



『スタ、スタ、スタ…』



(後は特服着てるし、左袖に『卍 参番隊 特攻』の刺繍があればビンゴかなぁ。)



『スタ、スタ、スタ…』



(ぬわぁ、お腹空いた。)



『スタ、スタ、スタ…』



…気がつけば私の足は既に橋の下の影へと踏み入れていて、
あなた
ありゃりゃ、考え事してたからちょっと遅かった?

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