眉なしの細い目枠から背の低い私を見下ろすパーちんに、私の視線は下を向く。
ふと顔を上げた瞬間、
パーちんの瞳の奥に、
いつもと違う何かが埋まっているのを感じた。
その瞬間、
『カバッ』
大きく抱きしめられた。
後に続く予定だった言葉を飲み込み、いきなりどうしたのか不安になる。
(いつもはこんな事絶対しないのに。)
何も言わず、じっと私を抱きしめ続けるパーちん。
口は黙ったままだが、パーちんを纏う雰囲気がいつもと違う。
はたとその違和感の正体に気がついた私の目は、徐々に大きく瞼を開き始めた。
_____パーちんが傷ついてる。
私は直ぐに顔を反らして、パーちんの後方に立つ三ツ谷に視線を向ける。
パーちんの腹心、
東京卍會 参番隊 副隊長の林 良平 (通称『ぺーやん』)は軽く会釈すると、パーちんの隣に並んだ。
ぺーやんに寄り添われながら鳥居の方へと向かっていくパーちんの背中を見送った後、
三ツ谷が話し始めた。
" 愛美愛主 " 。
私達の2つ上の世代、つまり高校生で構成された新宿を仕切る暴走族だ。
新宿を仕切ってるうえに、八代まで続く歴史がある。
そして、その愛美愛主の八代目総長に君臨しているのが 長内 信高だ。
一方、東卍は渋谷を拠点としていて、
まだ万次郎が初代総長なだけあって、発足してから間も無い新しい暴走族だ。
『ピクッ』
嫌な予感がして、私の耳が微かに動く。
三ツ谷の口から出たその言葉に、
さっきのパーの言葉が重なり合う。
『女ってこんな弱ぇんだな、、、くそ、』
ああ、そういう事だったんだな。
パーが発したその言葉の意味と理由をやっと汲み取れた私は、静かに目を伏せた。
パーは普段は口調は荒いけど、仲間想いで優しいやつだ。
私の心の波はザワザワと騒ぎ立て始める。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。