第14話

Realize(2)
1,508
2021/06/28 17:00

眉なしの細い目枠から背の低い私を見下ろすパーちんに、私の視線は下を向く。
あなた
あ、あああのさ、パー…実は謝んないといけないことがあって。
その、キヨマサの事なんだけど…
林田 春樹(パーちん)


ふと顔を上げた瞬間、

パーちんの瞳の奥に、

いつもと違う何かが埋まっているのを感じた。

あなた
………パー?
林田 春樹(パーちん)
抱きしめて良い?
あなた
…良いけど、

その瞬間、

『カバッ』

大きく抱きしめられた。

後に続く予定だった言葉を飲み込み、いきなりどうしたのか不安になる。


(いつもはこんな事絶対しないのに。)

あなた
どしたの、パー?急に何で___

何も言わず、じっと私を抱きしめ続けるパーちん。

口は黙ったままだが、パーちんを纏う雰囲気がいつもと違う。

はたとその違和感の正体に気がついた私の目は、徐々に大きく瞼を開き始めた。





_____パーちんが傷ついてる。




あなた
パー、何があった?どうした?
林田 春樹(パーちん)
女ってこんな弱ぇんだな、、、くそ、

私は直ぐに顔を反らして、パーちんの後方に立つ三ツ谷に視線を向ける。
龍宮寺 堅(ドラケン)
パー、今日はもう帰れ。
ペー、頼んだぞ。
あなた
気をつけてね、パーも、ぺーも。
林 良平(ぺーやん)
ウッス。

パーちんの腹心、

東京卍會 参番隊 副隊長のはやし 良平りょうへい (通称『ぺーやん』)は軽く会釈すると、パーちんの隣に並んだ。

ぺーやんに寄り添われながら鳥居の方へと向かっていくパーちんの背中を見送った後、

三ツ谷が話し始めた。


三ツ矢 隆
" 愛美愛主メ   ビ  ウ  ス " って暴走族チーム、覚えてるよな?
あなた
うん。
三ツ矢 隆
その頭が " 長内おさない " って奴って事は?
あなた
覚えてるよ。



" 愛美愛主メ ビ ウ ス " 。


私達の2つ上の世代、つまり高校生で構成された新宿を仕切る暴走族だ。

新宿を仕切ってるうえに、八代まで続く歴史がある。


そして、その愛美愛主の八代目総長に君臨しているのが 長内おさない 信高のぶたかだ。


一方、東卍は渋谷を拠点としていて、

まだ万次郎が初代総長なだけあって、発足してから間も無い新しい暴走族だ。
三ツ矢 隆
ちょっとした事でパーの親友とモメてな。

『ピクッ』

嫌な予感がして、私の耳が微かに動く。
三ツ矢 隆
パーの親友は愛美愛主のメンバーに袋叩きにされて、
龍宮寺 堅(ドラケン)
三ツ矢 隆
更に目の前で彼女ヤられて、

三ツ谷の口から出たその言葉に、

さっきのパーの言葉が重なり合う。






『女ってこんな弱ぇんだな、、、くそ、』







ああ、そういう事だったんだな。

パーが発したその言葉の意味と理由をやっと汲み取れた私は、静かに目を伏せた。


パーは普段は口調は荒いけど、仲間ダチ想いで優しいやつだ。



私の心の波はザワザワと騒ぎ立て始める。



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