第31話

Restart(9)
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2021/08/09 17:00












惨めな話と捉えられるかもしれないが、

私には学校に友達が1人として居ない。



私の立場や過去の暴力沙汰が相俟って、

腫れ物扱いされている。


因みに " 過去の暴力沙汰 " とはかなり前へと遡る様な話で、小学生の頃に何度か起こした事件の事だ。

それが後を引き摺っているらしい。


しかし、暴力を厳しく禁ずる当学校で、

私は何度か絶対的立場と権力の元で守られていた。





" 触らぬ神に祟りなし " 。



きっとこの学校の全員が私の事をそう思っているに違いなかった。

現にこの学校に入学してから話しかけて来た生徒は、片手で数えられるくらいだ。

基本、好き好んで私と関わろうとする生徒は居ない。



そして、その立場と権力の正体は───────



あなた
私の実母の再婚相手。


つまり、継父と呼ばれる続柄の男だった。





勿論、私を面白くないと思う人間も多々居るだろう。

正直言えば、私自身も面白くない。

継父アイツの手中で生き続けるしかないような生き様は、死んでも死にきれない様な辱めを受けているのと同等だ。

継父アイツの思惑通りになど、なってたまるか。








私は、


継父アイツが大嫌いだ。






あなた
…そろそろ帰ろ。


今日は4限までの授業だったものの、
エマちゃんが持たせてくれたお弁当を美味しく頂いて、
万次郎の学校が終わる時間まで待つ。

本を読んで、居眠りをして…その時刻が来るまでずっと教室で待っていた。


(…まぁ、万次郎は学校サボるとか言ってたからいつ連絡しても良いんだろーけど。一応ね、一応。)



私以外誰も居ない教室で、

私は生徒の殆どが正門から下校したのを窓から確認して、携帯を開いた。



『パカ、…ポチポチポチポチ…』



《マイキー、学校終わった。裏門で先に待ってる。》




たった二文だけを打つと、直ぐに送信する。

椅子の背に掛けていたサッチェルバックを背負うと、ゆっくりと教室のドアの方へと進んでいく。


あなた

さっきまで机に突っ伏して寝ていたお陰で崩れた前髪を窓の反射で確認したので、

歩きながら片手の指先で整える。


臙脂えんじ色の上履き用スリッパから音をさせながら、何度か他部の髪を手櫛で梳く。


まだぼやぁっとする意識が残る中で、ドアの前に立った時だった。




『__ピタリ。』


思わず、引き戸に掛けようとしていた手を止める。

あなた




『パタ、パタパタパタパタッ…!!』



(…ドアの前に)



___誰か居た。







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