第8話

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2021/06/18 17:00
泣き虫くんから借りたガラケーを開くと、すぐさまアドレス帳を開く。


『ポチポチ、ポチポチ…』


" た " 行の1番下まで下矢印のボタンを何度も押して、漸くお目当ての連絡先を見つけた。



(アドレス帳に『君』付けって。泣き虫くんは真面目なんだなぁ。)



『ポチッ…プ、プ、プ…プルルルル…プルルルル…』


携帯を耳に当てながら、叢の上に下ろしたサッチェルバッグを持ち上げて、肩紐に腕を通す。


『プルルルル…プルルルル…』


(うーん、出ないか。)


スピーカーの奥で呼び出し音が鳴り続けるだけの様子に、

私が諦めようと耳を少し離した時だった。


『ガチャッ』

《どうした、タケミっち?急ぎの用じゃなきゃ切んぞー。》
あなた
あ、ドラケン?タケミっちじゃなくて、私。元気してた?
龍宮寺 堅(ドラケン)
《はぁぁあ?!『元気してた?』じゃねーよ!今までずっと皆でお前のこと探してたんだぞ!何時まで経っても帰って来ねーし、携帯繋がんねーし、》
あなた
携帯はね、えっと…家に置きっぱのまんまなんだよね、アハハハハ。
龍宮寺 堅(ドラケン)
《『アハハハハ』じゃねーよ。つーか、何。お前、タケミっちと知り合いなの?》
あなた
『タケミっち』?

そうだろうなとは思っていたが、

あの " 泣き虫くん " が恐らくドラケンの指す『タケミっち』なのだろう、と悟る。
あなた
ううん。ちょっと会っただけ。
龍宮寺 堅(ドラケン)
《あ?何だそれ。》
あなた
てか、電話で聞くドラケンの声、なんかいつもより低く聞こえんね。また声変わりした?
龍宮寺 堅(ドラケン)
《この2週間でする訳ねぇ___って、おい、待て、勝手に取んなって》

『ゴトゴトッ』
あなた
ん、ドラケン?

ドラケンの会話が途切れ、少し大きな物音が聞こえた。
あなた
おーい。
《お前今どこにいんの?》

物音が聞こえた後、

電話の向こう側で聞こえた声はドラケンとは違う声だった。


だけど、

聞き慣れた東卍 ウチの総長の声。
あなた
久しぶり、マイキー。元気してた?
佐野 万次郎(マイキー)
《うん。で、どこ?》
あなた
今? えーっとね、堤防近くの橋の下。
佐野 万次郎(マイキー)
《分かった。今から迎えに行く。》
あなた
え!良いよ、悪いし。
佐野 万次郎(マイキー)
《いや、行く。俺が行くから待ってろ。》

いつもより頑なに迎えに来ようとする万次郎に、私は目をぱちくりさせた。


(どしたんだろ。なんか余裕の無い声。)


「分かった」と一言返事をすれば、プツリと電話は切れた。


『パタン、』と泣き虫くんの携帯を閉じれば、Uターンして泣き虫くんとその仲間たちの所に向かう。

あなた
泣き虫くん、携帯ありがとう!
花垣 武道(タケミっち)
あ、うん!
あなた
じゃ、行くね!
花垣 武道(タケミっち)
え!!!
あなた
ん?

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