私の言葉に三ツ谷がピタリと会話を止める。
私の放つ殺気に三ツ谷の顔が強ばった。
(私を狙ってる奴、ねぇ。)
何が目的かは知らないが、どんな相手であれ、
対峙すれば恐らくかなり物騒な展開にはなるだろう。
考えたくはないが、
私を狙う輩が東京卍會内部ではない、
という保証は現在の時点では得られない。
『スタ、スタ、スタ』
『ヒョコッ』
深刻な空気になる中、私の後ろから顔を覗かせた万次郎がヘラりと笑う。
背負っていたサッチェルバッグをスルリと降ろすと、
バッグの金具を外して、中から " 例の物 " を取り出す。
万次郎の顔の前に差し出すと、彼は両手で受け取るなり、目を輝かせながら喜びの声をあげた。
私はその様子を見て、「うん。」と頷く。
口をモグモグさせながらどら焼きを頬張る万次郎を見て、三ツ谷は頬を緩めた。
武蔵神社を後にする4人の足は、ゆっくりと鳥居へと向かっていた。
(ちゃんと明日も会うんだねぇ。)
ニシシッと1人で笑っていると、
ドラケンの「何笑ってんだよ、気持ち悪ぃ。」という声が降ってきた。
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参道を歩き、鳥居を潜り抜ける。
ふと後ろを振り返れば、そこは寂しい神社の社があるだけだった。
万次郎の呼び掛けに応じ、私は万次郎のバイクの後ろに跨った。
私は神社に微笑みかける。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!