先輩と付き合うことになったのが先週の話。
お互い幸せに溢れていた1週間。遊ぶ約束をする頻度も格段に多くなった。
よく晴れた日曜日、デートにはもってこいの天気だが、先輩が提案したのは「おうちデート」
嬉しかった。けど、なんせおうちデートなんて初めてで若干の緊張と大きな期待とともに喫茶店へ。(集合場所は何も言わなくてもここになってしまった。)
今日は珍しく私の方が遅めの集合。
朝から笑顔が眩しい。
テクテク歩く先輩の背中を追う。
先輩のおうちは1度だけ行ったことがあるものの、道を覚えているほど記憶力も良くないので、素直に道案内をお願いする。
男子高校生にしては綺麗な部屋で、2人がくつろぐには十分な広さだった。
すると、なにか思い出したような顔をした先輩。
後半に連れて声が小さくなっていく先輩。
先輩がいいなら喜んで?w
なんだか恥ずかしそうに頬を赤らめて言う。
そんなことされたらこっちまでなんか恥ずかしくて、「気安く名前なんて呼べないな」と思いながら顔をそむけていると、
と、手招きされる。
赤ちゃんみたいに四足歩行で近づいて、隣に座った私。すると彼は少し苦しいくらいのハグをする。
しばらくそのままにしていたが、いっこうに離してくれない。強かった腕の力もだんだん抜けて全体重をお互いに預ける。
「証明なんていらないのに」声に出せずに体の中に逆戻りした感情を柔らかい微笑みで、表現したつもりにした。
ふわふわした空気が流れていたその時、
急に現実に引き戻されたような気分だった。
彼はやっと私から離れて大きく伸びをしたかと思うと、元気よく「ゲームしよ!」なんて言うから「元気ぃ」なんて思いながらひとしきり楽しんだ。
何気ないことを話しているこの時間が
一番の幸せだった。
そろそろ帰るにはいい時間。
少し名残惜しいが帰らねば。
2人で肩を並べて来た道をもどる。
そんなに田舎じゃないはずだが、すれ違う人は
ほとんど居ない。
名残惜しさ満載でつぶやくシルク。
そう言って振り向いた彼は私のネックレスに少し触れて、「目瞑って」と囁いた。
言われるがまま目を閉じると、彼は私の唇に優しいキスを落とした。
誰もいない路地裏で、家々の隙間から漏れる夕日を照らされる私たち。この辺りだけ時間の流れが違うんじゃないかと錯覚するようなゆっくりと優しいキスだった。
その後はお互い少し火照った顔のまま手を繋いで駅までゆっくり歩いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。