あなたside
何…これ…全く動けない…
ついさっきの恐怖がまた蘇る。
何もわからなくて、動けないこの感じ…
もちろん拳銃のことだ。
そういうと、この辺に住んでいる私も知らなかった
ような、道なのかも怪しい道を案内された。
10分ほどすると廃工場のような建物が見えた。
少しを笑みを浮かべたその顔は、
恐怖を余計に掻き立てる。
案内されたその建物の中には、動物園とかで
見る檻がある。
檻の鍵を開けながらこちらに問いかける。
その間も銃口は下ろされないまま。
何?どうすればいいの?
檻を指さす
そんなとこ、入ってたまるか…
動物園の動物じゃないんだから
さっきの眼だ。
体が言うことを聞かなくなる。
仕方なく檻に入って、大人しく鍵を閉められる。
どういうこと…?
こいつは何をしようとしてるの…
片眉を吊り上げて、微妙に笑うこいつに
逆らえなくて、シルクに電話をかける。
その声色は落ち着いている。
そう言って、切られた電話。
この辺りまで聞いて、嫌な予感がしてきた。
もしかしてこいつ…
今まで見てきた眼の中で、間違いなく、1番鋭い眼だ。
このままシルクが来てしまったら、殺されてしまう…
今のこいつに何を言っても、無駄な気がする。
なら、話を逸らしてシルクの機転に任せるしかない。
カンカンカン…
階段を登ってくる音がする。
あぁ、着いてしまったんだ。
結局なにも出来ずに、時間だけが過ぎてしまった。
私の方に銃口が向けられる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!