第52話

My Heroes
361
2021/02/07 07:00
緑谷視点
ウバステ
ウバステ
ん……。
緑谷
緑谷
綺想さん!
梅雨
梅雨
あなたちゃん!よかった……!
ウバステ
ウバステ
みん……な……。
綺想さんの声は掠れていた……。
緑谷
緑谷
綺想さん、喋らないで、精力を使ってしまう……。
八百万
八百万
今救急車を呼びました。
お茶子
お茶子
これで助かるの…?
ウバステ
ウバステ
…助からないよ。
緑谷
緑谷
綺想さん、喋ったら……。
ウバステ
ウバステ
救急隊が着くまでに精力が保たない。
ウバステ
ウバステ
私は……ここまで。
お茶子
お茶子
そんな…ダメっ!ほらっ、私の精力使っていいから…!
お茶子
お茶子
お願い…死なないで!
切島
切島
俺のもやるよ!
響香
響香
私のも!
ウバステ
ウバステ
…馬鹿な奴ら……ヒーローがヴィランを助けてどうするのよ……。
ウバステ
ウバステ
最後の時間くらい……楽しませてよ。
お茶子
お茶子
死なないで…死なないで……。
ウバステ
ウバステ
お茶子ちゃん…ごめんね。
ウバステ
ウバステ
私は、あなた達と会って変わった…。
ウバステ
ウバステ
何があっても私を受け入れてくれた…。
ウバステ
ウバステ
私は…この世界に、少しの希望を感じた……。
ウバステ
ウバステ
私に光をくれたのは…あなた達、ヒーローだった……。
ウバステ
ウバステ
だから…改めて言わせて……。
綺想は笑顔を見せる。
ウバステ
ウバステ
あなた達と会えて、本当によかった…。
緑谷
緑谷
そんな……こんなの本当に死ぬみたいじゃないか…。
ウバステ
ウバステ
……お父さん…?
梅雨
梅雨
えっ?
綺想さんは空を見つめている。
ウバステ
ウバステ
そこに……いるの…?
綺想さんは宇宙に手を伸ばす。
梅雨
梅雨
ダメ……いっちゃダメよ…あなたちゃん。
蛙吹さんは綺想さんの手を握る。
ウバステ
ウバステ
……初めて声をかけてくれたのは…あなただったね…梅雨ちゃん……。
梅雨
梅雨
あなたちゃん…。
ウバステ
ウバステ
衝突して、葛藤を乗り越えて…今の私にはこんなに沢山の英雄がいるんだね……。
ウバステ
ウバステ
…これが、……私の望み………。
ウバステ
ウバステ
英雄の前で、……ヴィランとして…死ぬこと………。
ウバステ
ウバステ
私は……幸せだよ………。
響香
響香
そんなの…私達望んでない……。
轟
…生きるんだ、…絶対に……。
ウバステ
ウバステ
もしも…もっと早く……あなた達と会えていたら……。
ウバステ
ウバステ
私は………ヒーローに………………。
綺想さんはそっと目を閉じ、手が蛙吹さんの手からするりと抜け落ちた。
梅雨
梅雨
……あなた…ちゃん?
緑谷
緑谷
綺想さん……?
梅雨
梅雨
あなたちゃん……起きて…。
梅雨
梅雨
……お願いよ…。
蛙吹さんは冷たくなった綺想さんを抱きしめて泣いた。
八百万さん達の啜り泣く声が聞こえる…。
1人のヴィランに涙を流すヒーロー達を、月明かりが優しく照らしていた。
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弔はその様子を、黒霧と静かに見守っていた。
弔
……行くぞ、黒霧。
黒霧
黒霧
はい。
そこに、1羽のインコが飛んできて、弔の肩に止まる。
モウティヴ
モウティヴ
………
弔
どうしたモウティヴ、ここにに来てもなにもいいことはないぞ。
モウティヴ
モウティヴ
……
弔
……。
弔はそのままワープゲートの中に消えていった。

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