どうしてもこころいカフェが気になって、
朝早く家を出て、学年倉庫に向かう。
そこにはちゃんと空き教室があった。
内心ビクビクとして、手が震えている。
震える手で引戸を引くと、自動ドアのようにするりと空いた。
ドアから顔を出したこころい先生はそう言ってニヤッと笑った。
その笑みはまるで山姥のようで、少し体が震える。
そう言ってこころい先生は、カップにハーブティーを注いだ。
ふわっとハーブティーの香りが辺りに漂う。
置かれたカップのハーブティーを一口飲むと、
昨日のように、眠気が襲ってきた。
目を覚ますと、私はこころいカフェの前に立っていた。
今日のこころいカフェは小雨が降っていて何故か夜。
カフェの明かりが雨を優しく照らした。
小雨は霧のように細く柔らかくて、
どこか心地いい。
雨が私のもやもやした気持ちを洗い流してくれるような。
そんな気がした。
こころいカフェに入ると、彩葉さんが出迎えてくれた。
彩葉さんが貸してくれたタオルで体を拭く。
ブレザーのポケットから入館証を取り出し、
くるんと裏返してみる。
入館証の裏は丁字茶色の文字で『大地の間』と書かれていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。