その扉の先には、いくつもの扉があった。
一番出前の薔薇色の扉は【薔薇の間】。
右の丁字茶色の扉は【大地の間】。
真ん中が純白の扉で【獣の間】。
最後にラベンダー色の扉、【ラベンダーの間】。
他の扉に入ってみたいという好奇心も合ったけれど、
ラベンダー色の扉を開けた。
…ガチャ
扉を開けた瞬間、私ははっとした。
そこはラベンダー畑で、一面が紫色。
まるで絨毯のようだ。
その真ん中に、パラソル付きのガーデンテーブルと椅子が2つ並べられていた。
誰かの声がして、その方を見ると、同い年くらいの女の子が立っていた。
その子の話によると、部屋には『部屋主』がいて、自分に合ったハーブティーを作ってくれるらしい。
ラベンダーの間では、薫ちゃんが作ってくれるって。
ガーデンチェアに腰かけて、薫ちゃんを見ていた。
薫ちゃんは、テーブルにカップを二個置いて、
ハーブティーをゆっくり注いだ。
ふわっと、花のすがすがしい香りが漂う。
受け取ったラベンダーティーは、花の色と違い薄茶色で、いい香りがする。
一口飲むと、少し苦めのスッキリした味がする。
こくこくと飲み進めると、ラベンダーティーは無くなってしまった。
ほっと一息つくと、それは黒いモヤモヤとなった。
私が問い返すと、『そうそう』と薫ちゃんが頷いた。
薫ちゃんのお陰で不安な気持ちは消えていった。
何か、スッキリしたな。
薫ちゃんに手を振り、急いで紫色の扉を出た。
こころいカフェのメインフロアに戻ってくると、彩葉さんがカウンター席にラベンダーケーキを置いていた。
カウンター席に座ってパクリと食べる。
これはラベンダーチーズケーキかな?
チーズの濃厚さと、ラベンダーのさっぱりとした匂いがマッチしている。
嘘…!
これが手作りなの!?
彩葉さんって料理上手なんだ~!
その瞬間、カランコロンとベルの音が鳴った。
次の時にはさっきの空き教室。
こころいさんがこちらをじっと見ていた。
こころいさんは無理矢理私を教室から押し出した。
ドアがピシャッと閉まる。
そしてポカンとなってしまった。
そこには空き教室なんて無く、学年倉庫と書かれた部屋だった。
ガタガタと扉を揺らしてみたけど、
扉は開きそうにない。
その日は諦めて帰ることにした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!