第128話

映画 ~長尾~
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2021/11/25 12:00





長尾 side

















あなた 「え〜、今は好きな人とかいいかな、笑」




『そーなん?………って、それ言ってもう2年目ですけど笑』




あなた 「バレた?笑」














なんて笑ってるのは友達のあなた。




もう高校2年生で周りは付き合ったり、別れたりを繰り返してて。




そんな中、何も噂がないあなたに事情聴取すること、もう数回目です、笑




かわいくて、優しくて、本人は自覚ないけどめちゃくちゃモテてるし、




告白されてるとこも何回か見たことあるけど、全部丁寧に断ってて。




何かあったんかなって気になるよな、うん。














『たまにはそういうの聞きたいねんけど!!』




あなた 「まあ昔は好きな人ぐらいいたよ、笑」




『え!?あなたに!?どんなひと!?』




あなた 「それ教室でする話じゃないじゃーん!」




『みんな聞き耳立ててるし笑笑』




あなた 「え、そんな対した話じゃないし、聞かないで!?!?てかここでは言わないよ!?」




クラスメイト 「え、教えてよ〜笑」




クラスメイト 「もしかして実は彼氏いるとか?」




クラスメイト 「え、まじ!?」




あなた 「彼氏はいませんから!!」




『彼氏、は、?』




あなた 「彼氏も好きな人もいませーん!!」




「「笑笑笑笑笑笑笑」」




先生 「朝礼するぞー」




『結局なんも教えてくれへんのかーい!笑』




あなた 「そのうち!!ね!!別にいい話じゃないし、笑」




『え?』




あなた 「あれ?転校生?」




先生 「お父さんの転勤で引っ越してきたそうだ。入ってきていいぞー!」




『イケメン到来?笑』




あなた 「漫画じゃないんだから笑」




『それもそっか笑』













そんな感じで話していると入ってきた転校生。




少女漫画からでてきたような、どこか不思議な、近寄り難いオーラを放つ人。




とにかくイケメンがやってきた。




『めっちゃイケメンやん、、、』そう言おうとしたはずが、無意識に自分の口は閉じてしまった。




あなたが今にも泣き出しそうな、辛そうな顔をしていたから。














先生 「自己紹介をしてもらおうかな、」




転校生 「はじめまして!小さい頃ははこの辺りに住んでいたんですけど、めちゃくちゃ久しぶりなのでよければ案内とかしてもらえると嬉しいです、笑 ……あ、西畑大吾です、宜しくお願いします!!」




「「パチパチパチ!!!(拍手)」」




『………あなた、?(小声)』




あなた 「………………………………」














さっきまで転校生を見ていた目は気づけば下の方に向いていて。




知り合いなのか、なんなのか。




ただこんなあなたは初めて見て。




いつも笑顔が絶えないあなたをこんなにも変えてしまう相手って、、、




もう一度声をかけようとした時、俺の声を遮って優しい声が聞こえてきた。














転校生 「…………あなた、やんな、?」




あなた 「いや、そういうわけじゃ、…え、ちょ、」




転校生 「……………会いたかった、、、」














映画を客席で見ているような気分になった。




ただスクリーンを眺めて、何も出来ない自分。




それとは裏腹に2人の姿はまるで映画のワンシーンみたいだった。




すぐにあなたの存在に気づいた彼は、優しい声であなたの名前を呼んで、優しく抱きしめていて。




あなたの頭に添えられた手がどれほどあなたを大切に想っているのかが痛いほど伝わってきて。




初めは抵抗していたあなたも素直になれたのか、軽く抱きしめ返していて。




あなたから溢れる涙はとても綺麗だった。




…………そんな綺麗な涙、彼のため以外には流さないんだろうな、と気づいたと同時に、




チクリとさす心臓の痛みにも気づいた。




今まで見てるだけやった罰かな、




もう遅いけど、









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