美咲side
「ご、ごめんなさい‼︎」
今日はついてな………
「あれ、佐藤さんじゃん。」
「(げっ…)」
顔を上げてみれば、知ってる顔。
しかも、私の隣の席の人。
「うわー、あからさまに嫌な顔しないでよー」
よりによってなんでこんな奴に……
「で、何で泣いてるの?」
「…………」
「また嫌そうな顔。ほんと俺のこと嫌いだよねー」
そう、そして私はこいつのことが嫌い。
もちろん本人自覚済み。
「…何でもないから。」
「そう?」
「てか、女の子と待ち合わせとかしてるんじゃないの?」
「あっ、そうだった。」
駅前で女の子と待ち合わせしてるんだって。
聞いてないのに教えてくれた。
「じゃーね。佐藤さん。」
彼の名前は伊野尾慧。
学校一のモテ男、そして、学校一のプレイボーイ。
あいつのどこがいいのか、私には全くと言っていいほど分からない。
とにかく私は、あいつのことが苦手であって大っ嫌いなんだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!