こ「ここが美術室。で、その隣が音楽室ね。
あと、ここの階は3年のフロアなんだ。」
ここの学校は1階ごとにフロアが大きい。
3年生の階だからか廊下にいる人たちちょっと怖いかも。
こ「で、えっと次が、あれ?木工室どこだっけ?」
木工室は普段使わないのか忘れてしまったらしい。頭左右に傾げ悩んでいる姿が少しおかしく見えたので思わず笑ってしまった。
「ふふっ」
こ「な、笑くことなくない!」
さ「あれ?ころんじゃんなにしてんのー?」
ピンクのカーディガンを着た3年生の人がこっちに歩いてきた。
こ「あ、さとみくん。」
さとみさん?は私をみて少しびっくりしていた。
さ「おま、女連れて何してんだよ。」
え?
こ「違うよ、この子は転入生で学校案内してたの!」
さ「へぇー、転入生なんだ。
俺は3年のさとみよろしくな。」
さとみさんは、こっちに手を差し出した。
これは、握らないといけないやつでは?
そう思い、軽く手を当てる。
そしたらさとみさんはギュッと握ってくれた。
さ「君は?」
「私は2のBのほたるです。よろしくお願いします。」
さ「おう!」
手、そろそろ離してくれても……。
こ「木工室思い出した。行こ。
じゃあねさとみくん。」
さ「あぁ。今日一緒に帰るだろ?校門で待っとくから。」
こ「うん、分かった。」
そうして、さとみさんと別れた。
木工室に行き、校内の案内は終わった。
教室に戻って帰る準備をする。
「ありがとうございました。」
こ「別に、」
ころんくんはさとみさんと別れた後からちょっと機嫌がよろしくない。
なんでだろ?
こ「ほたるさんはさ、さとみくんのこと好きなの?」
は?
ころんくんは、そっぽ向いていて表情が分からない。
「な、なんでそう思うんですか?」
こ「手、嫌がってなかったから。」
あー、さとみさんもころんくんも嫌ってわけではなかったけど。
こ「それに、」
まだあるの?他に何かやったっけ?
こ「僕がよろしくって言ったらすぐ別の方見たし、さとみくんの時ちょっと笑ってたじゃん。」
それは、どう考えても私に非があるな。
どう弁解しようか。
こ「さとみくんはやめた方がいいと思うよ。」
「え?」
ころんくんがこっちを向いた。
夕日に照らされ影でよく顔が見えなかった。
こ「あいつモテるから。それに変な性癖持ってるし。」
はぁ。さとみさん、知らないところで暴露されて可哀想だな。
こ「ま、そういう事だから。
バイバイ。」
そう言って走って帰ってしまった。
ころんくんが帰ったあとしばらくぼーっとしていた。
あっ、まだ誤解解けてない!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!