長かった英語の授業が終わって、10分休み。
「亜希~、おはよう~! 心配したんだよ?」
目を潤ませながら言葉をかけてくれたのは、千夏。
大きくてクリッとした目からは、今にも涙がこぼれ落ちそうだ。
「心配かけてごめんね。昨日からいろいろあったんだよ~!」
「まあ、無事だったから安心したけど。で、昨日あのあとどーなったわけ!?」
ホッとしたような顔をしていた涼が、いきなり詰め寄ってきたからびっくり。
昨日逃げたくせに。
もし涼が昨日逃げてなかったら、今日遅刻しなかったかもしれないのに!
まあでも、いくら人気とはいえ、中原先輩は見た目チャラいし怖そうだし、逃げたくなるのもわかるけど。
「ん? そういえば昨日何があったんだ?」
純子は不思議そうな顔をしている。
同じく千夏も。
でも、今話すには時間ないしなあ。
「ん~、とりあえず、いろいろ! 今時間ないし、授業始まるから放課後に話すよ~!」
私がそう言うと、みんなは「わかった」と笑って、手を振りながら自分の席に戻っていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。