第13話

第2章
107
2018/10/01 11:30
# 友達と秘密の相談

次の朝。

眠い目をこすりながら、ひどい寝癖がついた髪の毛と格闘して、ぎりぎりの時間に教室に飛び込んだ。

「ま、間に合ったあ…」

浅のホームルームは出られなかったけどね。

本当は立派な遅刻だ。

窓ぎわの1番後ろっていう、最高ポジションに位置する自分の席についたのら、ちょうど授業開始のチャイムが鳴ったのと同時だった。

走って乱れた息を整えながら、英語の教科書をカバンから取り出す。

・・・なんか、視線を感じるんですけど。

私のふたつ前の右隣の席、つまり、涼から。

『ケ・イ・タ・イ・ミ・ロ』

口パクで自分のケータイをゆびさしながら、私の方を睨んでる。

え、怖い。

怖いんだけど…?

そう思いながらもケータイを取り出そうとしたら、りんちゃんが教室に入ってきた。

「りんちゃん」っていうのは、私のクラス担任でバスケ部顧問の林先生の愛称だ。

ちゃん付けで呼んでるけど、正真正銘、男の先生。

26歳と若くて気さくだし、何よりかっこいい。

彫りが深くて、濃いめの顔なんだけどね。

熱心に話も聞いてくれて、人気の先生なんだ。

意外にも、りんちゃんは英語の先輩だったりする。

「んじゃ、教科書この前の続きからなー」

日直が号令をかけたあと、りんちゃんのその言葉で授業が始まった。

私はその目を盗んで、ポケットに入っていたケータイをこっそり取り出した。

バレないようにケータイを開くと、新着LINE、電話の嵐。

それらは涼、千夏、純子からだった。

『亜希、まだ学校来ないの? 寝坊?』

『涼が心配してるよお〜! 気付いたら連絡してね!』

『亜希、死んでるのか?』

・・・などなど。

昨日の夜、私が意味わかんないLINEを送ったから、心配したんだろうな。

それに私、普段遅刻なんてしないし。

こんなに心配されてたんだと思ったら嬉しくなって、心がぽかぽかしてきた。

LINEを見終わって涼たちの方に目を向けたら、涼も、千夏も、純子も、私のことを優しい目で見つめていて。

いい友達だなあ、なんて、心から思った。

「はい、宮下さん。ニヤニヤしてないで授業ちゃんと聞いてくださいね?ケータイをちゃんとしまってね」

幸せな気分に浸っていた私を現実世界に引き戻したのは、いつの間にか目の前に立っていたりんちゃんだった。

しかも、いつもと違って喋り方もイヤにきれいで、静かに怒っているんだってわかった。

うえ〜、りんちゃん怖いよー……。

だって、口は笑ってるのに目は全然笑ってないんだもん。

これは、遅刻のことも合わせてお怒りと見た。


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