ドアノブが誰かの手によって回された。
上司が慌てて、体内にギチギチに入っているモノを抜こうと腰を引いた。
無理矢理挿れたせいですぐに抜けていかない。
焦って引き抜きているうちに、ドアが開いた。
市川くんと目が合った。
市川くんが上司に駆け寄った。
立ち尽くしていた上司のことを突き飛ばした。
逃げるように物品庫から出ていった。
あんな感情的な市川くんを始めて見た。
上司に抱かれているところをよりによって市川くんに見られた。
市川くんの顔を見れない。顔を上げたくない。
身体の力が抜け、その場に座り込んだ。
何も言わずに首を横にふった。
市川くんからそれ以降の返答がない。
引いてるんだ。
急に、冷えきっている身体を包み込まれた。
耳元で市川くんが鼻をすすった。
服に市川くんの涙がボロボロと落ちた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。