立てない清春の腕を引っ張って棚の支柱に縛り付けた。
必死の抵抗は虚しく、ズボンを下ろされた。
清春の顔を見て急に笑いだした。
上司に見せられたスマホの画面には、プロデューサーとのやり取りが映し出されていた。
「車の鍵物品庫に隠したので探しに行くと思います。あそこ誰も行かないからバレないです。」
隠すように置いてあった車の鍵。上司の良すぎるタイミング。
全て仕組んであった。
ずっと目を背けていた現実を突きつけられた。
見たくない。聞きたくない。信じたくない。
上司の嘘だと思いたかった。
ただ、こんな決定的なものを見させられたら信じざるを得なかった。
清春を絶望に突き落とした高揚感で顔が緩んで口角が上がっていた。
どうして自分ばかりこんな目に合わないといけないんだろう。他人の不幸が霞んで見える度に、自分が哀れで醜く見えた。
生まれて来なければよかった。
心の底からそう強く思った。
滑りが悪くて入っていかない。
力任せに無理矢理ねじ込んだ。
全て清春の中に入った瞬間、経験したことの無い圧迫感で息が詰まった。鋭い杭を突き刺したような重苦しい激痛で顔が歪んだ。
心も身体も痛みに支配されて逃げることは愚か、考えることすら出来ない。
動き出そうと、震えてる腰に手を当てた。
ガチャ……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。