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第16話

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2022/07/13 02:38

コンセントを刺して清春の背後に回った。
清春
清春
えっ、いや大丈夫です!
清春
清春
手間かけるので
慶一郎
慶一郎
全然手間じゃないから
清春
清春
自分でできると思います…!
慶一郎
慶一郎
人にやられる方がマシになると思ったんだけど…
確かに、自分でやるのと他の人にやられるので少し変わるかもしれない。
清春
清春
……じゃあお願いしてもいいですか…?
慶一郎
慶一郎
うん
ドライヤーのスイッチを付けて髪に風を当てた。



無機質なドライヤーの音が鼓膜を刺激する。
清春
清春
っ〜〜……
慶一郎
慶一郎
慶一郎
慶一郎
やっぱやめるか?
清春
清春
大丈夫です…
ギュッと目を強く閉じてこの時間が過ぎるのを待った。


ドライヤーの大きな音が頭の中に響く。
まるで今世界に自分しかいないようだ。


たった数秒が数分にも数時間にも感じる。



しばらくすると不快な音が鳴り止んだ。



慶一郎
慶一郎
終わったぞ
清春
清春
…ありがとうございます

自分の不安を表すように指先が震えている。
慶一郎
慶一郎
大丈夫か?

清春の手を両手で包み込んだ。
清春
清春
ありがとうございます…大丈夫です
慶一郎
慶一郎
ん、無理するなよ

慶一郎
慶一郎
タオル置いてくるからかして
清春
清春
あ、はい
使ったタオルとドライヤーを慣れた手つきで片付けた。
清春
清春
……
清春
清春
……市川くん
慶一郎
慶一郎
んー?
清春
清春
…今日のこと聞かないんですか…?
慶一郎
慶一郎
……
清春
清春
……聞かないのはあんなことしてた俺の事内心引いてるからですか…?

市川くんの真っ直ぐな優しさを信じたい。


慶一郎
慶一郎
…1ヶ月一緒にいたら清春がどんなやつかわかるよ
慶一郎
慶一郎
あの時清春に言われなくても、あんな事好んでするような奴じゃないって思ってる
慶一郎
慶一郎
何かしら理由があるんだろ?
清春
清春
………
慶一郎
慶一郎
別に今言わなくていいよ
慶一郎
慶一郎
話したくなったら話せばいいし、話したくなかったらずっと話さなくていいし
慶一郎
慶一郎
そこは清春が決めな




初めて与えられた選択権。


自分なんかにそんなものないと思っていた。






選んでいいんや。

そう、理解した瞬間に目尻から一滴の水が頬を伝った。

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