舌打ちをして、痛みに悶えてる清春を置いて出ていった。
まだ腕がズキズキする。
どんなに辛くても涙は出てこない。
こんな日常に身体が慣れを覚えている。
痛みが酷い。
跡になる前に冷やさないと、そう思い立ち上がって荷物をまとめた。
ブー、ブー
ポケットに入れていたスマホが鳴った。
誰からの連絡かなんて分かりきっている。
鉛のように重たい足で上司の元へと向かう。
遅れた分だけ酷い仕打ちが待っている。
この世界に、絵本に出てくるような「ヒーロー」なんていない。誰も助けようとなんてしない。
見て見ぬふりをしてその時が過ごすのを待っている。
自分の人生に絶念していた。
翌日、9bicのメンバーの1人が清春たちを外食に誘ってくれた。
もちろん断る理由も無いので外食に行った。
外食先は、一席3人までしか座れず、3、3、2に別れて座るしか無かった。
市川くんが率先して、きっと誰も選ばない2人席のとこを選んで座ってくれた。
あまり大人数での外食は得意じゃない。
どちらかというと苦手な部類だった。
自分のことを話すのが好きじゃない清春からしたら、質問が飛び交う外食は地獄そのものだ。
1人でも人数が少ない方がいい。
迷わず2人席を選んだ。
各自席について料理を注文した。
パッと見の外見が怖くて近寄り難かったが、話してみると人の良さがすぐにわかった。
紙ナプキンを取ろうと手を伸ばした。
料理につきそうになった袖を市川くんが引っ張った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。