車の鍵をどこかに置いてきた。
といっても、大体検討はついている。
いつも清春だけが使っている物品庫。
メンバーから数々の嫌がらせを受けてきた。
以前は同じ部屋に物を置いていたのだが、壊されたり、捨てられることが多々あった。
それから、もう誰も使っていない物品庫に貴重品を隠していた。
誰も使っていないが故に、ホコリ臭くて綺麗とも言えないが、物が無くなるよりはマシだ。
物品庫に入って車の鍵を探した。
他に忘れ物がないか入念に確認した。
すると、普段開かない扉がキィーっと不快な音を立てて開いた。
逆光で顔が良く見えない。
太陽光の方向が変わり、段々と誰か明らかになっていく。
清春と目が合うなり、背後から抱きしめた。
上司が出張に行っていてしばらく会っていなかった。
久しぶりの抱きしめられる感覚が上司との行為を思い出させる。
身体にまとわりつく腕を力ずくで振りほどいた。
振りほどかれた勢いで上司が床に手を付いた。
今のうち、そう思いドアに向かって走った。
気持ちの悪い言葉を囁いてくる、いつもの低い声じゃない。清春を震撼させるような大きい声に鬼気を感じた。
何ヶ月も言いなりにされていたせいで、身体が思うように動かない。
足が小刻みに震え、腰が抜けた。
清春の謝罪なんて耳に入っていない。
ドアの前に追い詰められた清春に近づいた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。