あなたside
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そんな、うそ。
うそでしょ、先輩のことだから。
いつもの意地悪でうそついてるに決まってる。
ずっと俯いていたのでせめてもの苦笑いで私よりずっと背の高いさとみ先輩を見上げると、
いつになく真剣な表情で私を見つめていた。
先輩の透き通って綺麗な青い瞳と目があって、先輩の気持ちが知れた嬉しさと、今まで自分がしてきたことがあまりに馬鹿すぎたことの恥ずかしさで、涙が込み上げる。
とてつもないパニック状態に陥って、さとみ先輩に抱きつく。
先輩は驚いても突き放さないでいてくれる。どれだけ優しいの。
スタイルはいいけど割とがっしりしている暖かい体で抱き返してくれて。
そんなことされたらもっと安心して涙が止まらないじゃん、
顔を赤らめてそう言ってくれる先輩を見ると私まで茹でダコくらい赤くなってしまいそう。
先輩から離れ、向かい合わせで話し出そうとすると口を塞がれてしまった。
顔は染まったままだけど、せめて涙を拭って。
上を向いて笑顔で。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!